体が鉛のように重く瞼は今にも閉じてしまいそうだった。自分のものとは思えない、意識と神経が分離している足を引きずり自室の扉を開けた時にはまだ記憶があったが、そこからベッドに移動するまでは無意識だった。上着とブーツだけを脱ぎシャツとジーパンのままベッドに転がる。着替える余力もない。

(つかれた……)

青い瞳を伏せてバジルはそのまま寝る態勢に入る。立て続けの任務、長期に渡るそれに休む間もなく気づけば三日、徹夜だった。空腹よりも睡魔が酷くそのまま沈むように意識を落とした。自室の部屋に鍵をかけ忘れたとも気づかずに。

ふと頬にさらりとした何かがかかった。首筋に濡れた感触がしバジルはうっすら目を開ける。銀色だけが微かに認識できて、ああ彼だと思った。ボタンが外される気配がして胸と、腹とに点々と唇を落とされる。

(夢、かな)

指先が重くぴくりとも動かない。声を出そうとしても腹に力が入らない。そういえばスクアーロも今は任務で留守のはずだ、と思い出す。ならばこれは夢、だ。夢に見るほど彼の事を恋しがっているのだろうか。

(どうせ夢なら、もっと)

浅ましい考えだとこの時ばかりは思わなかった。眠気に理性が麻痺しているらしい。もっと、口だけを動かして強請る。唇に受けたキスを最後にバジルの意識は再び沈んだ。




翌朝目覚めると頭ががんがんと二日酔いのように痛んだ。任務の都合上、酒を交わさなければいけない場面もあった。昨晩の睡魔はアルコールも作用していたのかなと憶測してベッドを下りる。当たり前だが衣服に乱れはない。

「やっぱり夢か……」

落胆を感じているのは、多分気のせいだと思いたい。顔を洗って着替えようと洗面台に立つと、首元に一瞬だけ赤い残像が見え隠れする。

「な――――!」

慌ててシャツのボタンを外してぎょっとした。
首と、胸と、腹とに赤い鬱血が点々と滲んでいたのだ。











人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -