痛い、と、止めて下さい。
組み敷いた子供の口から飛び出すのはたった二言。息継ぎの仕方すら忘れてしまったかのように、嗚咽と悲鳴みたいな喘ぎがその口からはひっきりなしに飛び出す。

「っ、ふっ、ぅあっ」

汗で貼りついた前髪を払ってやると涙に濡れた蒼が見上げてきた。相変わらず苦しそうにしか喘がない子供の額に唇を落とすと、大袈裟にこの子供はびくつくのだ。

「ひっ、あ、ぁあぁっ」

反射だろう、縋りつく腕は細い。背中に遠慮なく立てられた爪が肌を抉り、眉をしかめた。
おそらく見れたもんじゃないくらいに、背中は傷だらけだ。この子供は手加減を知らない。だがそれは俺も同じだから、爪を立てるなと責める事は出来ないのだが。
代わりに腰を抱えて激しく揺する。それだけでこいつはまた泣きながら喘いだ。初々しいを通り越すぐらい子供のような彼に、年の差をまざまざと感じた。
普段は同じ場所に立ち、時には肩を並べる事もあるこいつは、その実確かに子供なのだと瞠目する。日本で考えるならばまだ義務教育すら終えていない年頃らしい。
男相手に受け身になるなんて、男ならばあり得ない。それを強いている俺は、もしかしなくとも悪い大人だ。自覚はある。

「すっ、くあ、ろ……っ」

途切れ途切れに名を呼ばれふと見下ろすと、シーツの上の肌は赤く染まっていた。ぼろぼろと零れる涙を舐める。塩の味も微かにしかしない、泣き腫らした目元も真っ赤だ。
ぐっと深くまで抉るとまた悲鳴のような嬌声が鼓膜を刺激した。

「ゃっ……いた、いっ……」
「お前は、少しは力の抜き方くらい、覚えろ」
「む、り、……」

ぐずぐずに泣く姿は、何回やっても変わらない。どうやったらまともに喘ぐようになるんだ、この餓鬼は。

「んっ、あっ」

びくんと跳ねた体を力ずくで抱え込んだ。女のように柔らかくも何とも無い、薄い体。
首筋に顔を埋めて詰めていた息を吐きだした。おずおずと首に回されてくる腕に愛しさを感じる。
たからだろう、理性がどんなに無意味を訴えても、俺はこの腕をほどけない。










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