「手が冷たい人は心が温かいそうですよ」

会長は手が冷たいから心が温かいんですね、マフラーに顔を埋めながら颯斗は微笑んだ。鼻の頭が寒さで赤くなっている。それにぷっ、と噴き出すと颯斗は疑問符を浮かべたから何でもないと笑って誤魔化した。繋いだ手を多少強引に引いて早く帰ろうと雪のちらつく道を二人で歩く。
そう古い記憶ではない、雪が降り始めた頃だから最近の帰り道の話だ。それを今、どうして夢に見ているのだろうか。夢の中だからだろう、寒さも冷たさも感じない。どこかふわふわと心地よくて、隣では颯斗が笑っているからこの夢がずっと続けばいい、と一瞬だけ考えた。けれど繋いでるはずの颯斗の手の感触も曖昧だったから、やはり現実の彼を抱き締める方がいいとぼんやり思ったところで、不意に意識が浮いた。

「ん……?」
「あ、起こしましたか」

目に入った桃色の正体は彼の髪色で、その向こうに見えるのが生徒会室の天井だと気づいてあーと唸る。

「俺、寝てたのか」
「ええ、それは気持ちよさそうにぐっすりと」

仕事中に転寝など、いつもなれば颯斗に口煩く怒られるのに今日はそれがない。ずるりと肩から落ちたブランケットに先ほど感じた温もりを思い出した。誰がかけてくれたのか、詮索するまでもない。

「颯斗、ちょっとこっち」
「はい?」

不思議そうに近づいてきた彼の手を引っ張って引き寄せた。握りしめた掌からは確かな熱が伝わってきて、夢のなかよりもやっぱりこっちの方がいいと思った。

「……手が冷たい奴だけじゃないんだな」
「何がです」
「いや、独り言」

心が温かい奴だよ、心の中で呟いて唇を寄せた。合わせた口唇も、彼のは温かい。
ああやっぱり夢より本物の方がいい。





20100102






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テーマ「人外ファンタジー」
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