発光する色彩は眼に痛いくらいだった。赤、青、黄色、緑、様々な光がちかちかとかわるがわるに点滅する。煌びやかなイルミネーションに囲まれたのツリーは、この辺りでも一番大きな規模であると彼は教えてくれた。学園にもツリーはある、けれど学園の外で待ち合わせをしたいと言い出したのは彼の方だった。

(遅いな、会長……)

マフラーからはみ出した長めの毛先にふわりと白い何かが落ちた。雪だ。見上げれば漆黒の空からちらちらと白い羽のような雪が舞い降りてきていた。ツリーの下に立っているからかあまり雪は降りかかってこなかったが、白いそれにああ今年も冬が来たのだなと今更ながらに思い知る。そして、今年がもう僅かしかないということも。
冷えてきた気温に肩を震わせた。マフラーに顔を埋める。手袋をつけた両手をぎゅっと握り合わせ摩擦で熱を得ようとした。

「颯斗、」

悪い、とかけられた声に顔を上げる。急いできたのか解けかかったマフラーもそのままに、駆け寄ってくる彼がいた。

「寒い中待たせて悪かったな。大丈夫か?」
「はい、それほど待ってはいませんから」
「嘘つけ」

急にひたりと頬に何かを押しつけられた。手袋もつけていない彼の掌が無遠慮に己の頬に添えられている。

「ほっぺた、冷えてるぞ」
「……すいません」
「謝んなって。悪いのは俺だしな……これ、取りに行ってたから」

おもむろにポケットを探っていた彼は握り合わせたままにしていた左手を取り、手袋を勝手に外す。外気に触れた手がひやりとした感覚に震えるよりも先に、薬指にそれははめられた。

「これ……」
「俺からのクリスマスプレゼント。ま、安物だけどな」

俺とお揃いだ、と彼が持ち上げた左手には全く同じ指輪が薬指で光っていた。じわりと、胸の奥が、痛みのような温かさに包まれる。

「おいおい、泣くなって」

泣いてませんよ、と告げようとしたが拭われた目元が微かだが濡れていて自分でも驚いた。

「……ありがとう、ございます」

控え目な声で礼を述べると彼は心底うれしそうな、笑顔を見せた。純粋に、喜んでいる、表情。幸せそうな、笑顔。
自分とは大違いだ、と思った。真っ直ぐで、ひたむきで、そして輝かしい。その背中をただ見つめることしかできなかった自分は、きっと一生彼の背中に届くことすらできない。

(この指輪が、繋いでくれたらいいのに)

彼と自分を繋ぎとめるものはもう直消える。その時をただ怯えて待つしかない。
臆病で弱虫な心はツリーの輝きに反比例するかのように、黒く深く沈んでいった。





091225






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