やめて、と叫んだ声はむなしく空気に消えた。最初は必死に抵抗していたけど僕より身長も体格も大きい二人に押さえつけられてしまえばなんら意味は成さない。それに僕だって本気で抵抗なんか出来なかった。嫌だな、ともやめて欲しい、とも思うけど本気で二人を振り払えないのは、僕の体を好き勝手にしている二人を、僕自身が嫌いじゃないから。

「あ、ああ、う、あ、」

びくんびくんと跳ねる体をまた押さえられ、その瞬間びゅくりと精液を吐き出してしまった。はあはあ息をするのもやっとな僕の体から熱が抜け出していくと、支えを失った体はそのままこてんと前のめりに崩れる。しかし床に激突する事は無く、僕の体は正面に居たその人に支えられる。

「学人君、平気かい」
「ひ、びや、さ……」
「ったく、サイケも酷いよなあ、何もこんな激しくしてやる事無いのに」

日々也さんがまるで幼子にするように僕の髪を撫でながら、僕の背後にいるサイケさんにそう憎たらしく笑いかける。先程まで僕の中を好き勝手にしていたサイケさんはえー、と抗議の声を上げた。

「俺はがっくんが好きだからがっくんにも気持ち良くなってもらいたくてやっただけなの!っていうか俺、本当ならお前に学人触らせたくないんだからね!」
「そう邪険にするなって……お前が好きな学人君を気持ち良くしたいなら、二人でしてやったほうが学人君だってもっと気持ちいいだろ?俺だって学人君を良くしてやりたいし」

二人がそんなやりとりをしていても、もう僕には会話を会話として捉える事が出来ない。二人に押さえつけられて、足を開かれて、体の奥を暴かれて、そうして体中を弄られて隅から隅までを散々に弄られて何度も白濁を吐き出して、吐き出して、まともな言葉が出せなくなるくらいに、めちゃくちゃに啼かされた。頭の中がぐちゃぐちゃでサイケさんと日々也さんが何を話しているのか理解も出来なくなっている状態だ。なのに二人はまだ行為を止める気配が無くて、今度は日々也さんが僕の背後に、サイケさんが僕の正面に回る。

「さ、いけ、さん……」
「んー?なあに、学人」
「も……ぼく……」
「心配しなくても、ちゃーんと気持ち良くしてやるから」

やめてほしい、その意思を伝える事も麻痺した言語力では伝えきれず、強請っているのと勘違いされたのか背後で日々也さんが僕の耳に舌を這わせながら笑った。その瞬間、もう何度も二人を受け入れ精液を注がれた後ろに日々也さんの性器がつきたてられる。

「あっあぁぁぁぁっ!」

体が一気に熱くなって、頭がまたスパークした。緑色のサングラスはもうどこかに飛ばされてしまって、ベストだって近くには見当たらない。ストライプの入ったシャツ一枚だけをはおる僕は当然の事ながらズボンも靴ももう履いておらず、剥き出しの足を開かせるように日々也さんが僕の膝裏に手を添え左右に開いた。

「っふぁ、あんっ!あ、ああ、うあぁ……」
「はは、また勃ってきたな、学人君の」
「ひっ、いた、あ……あああぅっ!」

ぐりぐりと僕の性器の先端を日々也さんはいじくりながら、下から容赦なく突き上げる。手袋ごしの爪が尿道をぐりぐりと抉り、それだけでびゅくびゅくと痙攣する自身は先走りを吐き出し続ける。引き攣る腹筋が苦しくて息が上手く出来ない。痛いんだか気持ちいいんだかも分からなくて、ただ止めて欲しくて日々也さんの腕に手を添えた。

「ちょっと、俺のがっくんに痛い事しないでよ」
「痛みと快楽は同時に与えれば快楽に変わる。今は痛くても、その内学人君も気持ち良くて堪らなくなるって」
「でも痛かったら可哀想だろ……貸して、日々也は挿れてるんだから前は俺が弄る」

日々也さんの手を払いのけたサイケさんが酷く優しく僕の性器をなぞる。と思ったのも束の間で、かがんだサイケさんの口の中にはくりとそれを銜えられてしまった。

「ひぅっ……!あっ、ああ、あっ!あ、あああっ!」

くちゃくちゃとサイケさんの舌が裏筋をなぞり先端をぐにぐにと刺激する。その凄まじい快感に反射的に逃げ出したくなって腰を浮かせるけど、それではサイケさんの口に余計に押し込む結果にしかならなかった。それに腰を浮かせてもすぐに日々也さんに引き戻されて、その分だけ奥を穿たれる。前立腺と呼ばれる部分をごりごりと抉りながら、日々也さんは僕の項にちゅうと吸いついた。

「ひゃ、いやあっ!ああ、うっ!ああ、あうっ!やぁぁっ!」

ぶんぶん首を振るけれど二人から与えられる快感は止まる事を知らず、僕の体と思考、全部をどろどろにしていく。じゅくじゅくと響く水音が鮮明で生々しくて耳も犯されているような錯覚に陥った。何も何も考えないくらいの、快感の渦。
先程から何度もこんな快感を与えられ続けて、僕は本気でおかしくなりそうだった。

「……っも、やだっ、」
「がっくん……?」

僕の言葉を拾ったサイケさんが性器から口を離して顔を覗き込んでくる。唾液と涎と鼻水と、とにかく色々な液体で汚れた汚い顔に躊躇いもせずに触れると、そのまま唇にかぷりと噛みつかれた。

「むっ、んんっ、ん……んぅ……!」

激しいキス、口から食べられてしまいそうで怖くて、弱々しい力でサイケさんのコートを握る。ぷはっ、と長いキスを終えたサイケさんの瞳は、ぎらぎらしていた。ぎらぎらして、僕を、真っ直ぐ見詰めていた。

「さい、」
「……やばい、がっくんかわいすぎ」
「学人君、サイケにばっか構ってないで、こっちも」

ゆさゆさと僕の腰を揺すりながら、日々也さんが乳首にぎりっ、と爪を立てた。直接の指の感触じゃなくて手袋の布越しにぐにぐにと押し潰されたり捏ねたりされて、僕の背筋はぴんと反り返る。

「っいぁ!ああ、ひびっ……ああっ、らめ、らだ、ああんっ!」
「学人君、ほんと君の声最高だよ……」

日々也さんはうっとりしながらそう囁いた。でも意識の遠のきかけている僕には何を言ってるのか理解できなくて、ただの音として耳を通り抜けていく。日々也さんの声、とても綺麗な声は好きだなあと思うけれど、こういう風に僕をいじわるする時の声は好きじゃない。だって、そういう声を出す時の日々也さんは本当に僕の言葉なんか聞いてくれなくて、無理矢理色々な事を強要するから。今みたいに。
時折顔をのぞかせる日々也さんの傍若無人な所が、僕は苦手だった。

それは、サイケさんにも言える事だけど。でもサイケさんは僕が本気で嫌がれば止めてくれるから、その点では日々也さんよりも優しい。
けれど今は何を言っても二人は止まらないだろう。そもそも僕にだってもう何かを言える程の余裕は残っていない。

ただの嬌声しか発さなくなった僕の額に口付ながら、サイケさんは自身を取り出して僕の性器に擦りつけ始めた。そのままずれないように片手で軽く性器を支えると、僕の足を一層大きく開かせて腰を動かし始める。

「っいぁっ!ああっ、ゃあぁっ!あっ、あ、ああっ」
「がっくん、気持ちいい?気持ちいいよね、俺もすごい、きもちいいや……」
「あ、うっ……あんっ、ひっ、はうっ……!」

喉が掠れて喘ぎもまともに出て来なくなった。ただ目を見開いて止まる事の知らない涙を散らしながら、僕は泣き叫ぶ。快楽に思考と体の全てを支配されながら、白くなる視界と痙攣し引き攣る足に何も考えられなくなった。
持ち上げられては落とされる腰、その度に奥の奥を突き上げる日々也さん。そして僕の性器に自分の性器を擦りつけるように腰を動かすサイケさん。前と後ろ、両方から長時間与えられ続けた責め苦に、ついに限界が訪れた。

「ぁ……あっ、ああ、らめ、やら……っひあぁぁぁ!」
「んっ……」
「くっ……」

何度目か分からない絶頂。そのすぐ後に中と腹に温かい液体が飛び散る感触がした。多分日々也さんもサイケさもほぼ同時に達したのだろう。けれどもう僕は二人の声を聞く事も顔を見る事も出来なくて、精液で体中がどろどろなのを不快に思う間もなく、ぷつんと疲労と射精の衝撃から、意識を手放した。



「がくとほんとに可愛いなあ」
「またヤろうね、三人で」






(二人いっぺんに相手をするなんて、もう本当に勘弁してほしい)




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(08/21)






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