サイケさんは、どこか子供っぽい人だった。いや、ソフトウェアである僕らの事を"人"と表現するのは少し正確ではないかもしれないけど、僕らは確かに"人"と酷似している。感情とよばれる心が僕らにはあるし、姿も価値観も人間とはほとんど差異がないのだから、僕らは確かに"人"だった。
サイケさんは僕よりも背が高い。頭一つ分くらいは僕より大きい。白いコートとピンクのヘッドホン、艶やかな黒髪は確かに僕よりも彼に大人っぽい印象を与えるけど(実際にサイケさんの方が製造日は早いから年上だ)、彼はいつだって無邪気だ。無邪気というと語弊があるかもしれないが、とにかく子供っぽい。底抜けに明るいしいつだってサイケさんは楽しそうだ。なにが楽しいのかはわからないけど、いつも無邪気で楽しそうで、笑いながら学人、と僕の名前を呼んでくれる。言動は確かに子供のそれで、けれど頭が悪いわけでもない。むしろ知識・知能的な面でいえばとても秀でている。そのギャップに驚かされながらも、けれどやっぱり僕はサイケさんの事を日常の中で子供っぽいと思うのが常だった。
けれど、どんなに子供のような振る舞いをしていても、こういう時にはやっぱりこの人は大人なんだなと実感せずにはいられない。
「んっ……は、」
「がく、きもちいい?」
意地悪く淡いピンクの光彩を放つ瞳を細めながら、サイケさんはそう問いかけてくる。彼に組み敷かれて自身をぐちゃぐちゃにされている僕が、まともな返事などできるわけがない事を知らないはずがないだろうに。
「いっぱいでてきたね、がく」
「ゃ、ぁああっ!……さ、い、けさ、」
ぐち、と白濁が溢れる先端に爪が立てられ、あられもない悲鳴が口から勝手に飛び出てすごく恥ずかしくなった。ズボンをはぎ取られ上着とシャツも乱された僕の格好を今自分で見れたとしたら、確実に羞恥で死んでしまえるだろう。
「ゃぁ……」
「がっくんはほんと、体中どこもかしこも美味しそうだよね」
俺、学人なら食べれるかも、そう舌なめずりをするサイケさんは、驚くほど普段の印象から外れている。子供っぽさなんてどこにもない、その瞳に輝くのは獲物を前に舌なめずりをする肉食動物だ。
行為の最中僕ができる事といえば、ただただ彼に食べられるのを待つだけ。そして大人しく食べられる、だけ。
「学人」
「さっ、け……んっ、ふっ」
顎を掴まれるとがっつくようなキスが降ってきた。好き放題に僕の口の中を荒らし回るサイケさんは、本当に僕を食べる気なのかもしれない。現実的にそんなことが不可能なのはわかっているけれど、そんな妄想にとりつかれてしまうくらい、サイケさんのキスは深くて怖い。
「……っ、ふ、ああぁっ!」
唇を解放されたと思ったら、にちりと後ろに指が入り込んでくる。急な事に驚き無意識に締め付けてしまうと、僕に多い被さっているサイケさんがくすくすと笑った。
「そんなに締めなくたって、ちゃんと可愛がってあげるから」
「……んゃっ!ぁ……だめ、やぁ、そこだめ!」
余裕もゆとりも与えてはもらえない。僕の口の中を好き勝手に荒らしたように、中も激しく蹂躙される。前立腺を押しつぶすように抉られれば目の前がちかちかと白く瞬いた。
快感、と呼ぶにはすぎるほどの、気持ちよさ。
「ああっ、ゃっ、あんっ!」
「っ……がく、ほんと、かわいい」
「っサイケ、さんっ……」
名前を呼べば優しいキスが額に落とされて、サングラスを奪われる。目尻に浮かんだ涙を舐めてくれる彼は確かに行為の最中は肉食動物のようで怖いけれど、それ以上に、僕に優しい。僕が痛がることや嫌がることはあまりしないし、なにより。
「……学人」
僕の名前を呼ぶその声が、とても甘くて優しい響きを持っているから。
「い、れるよ?」
「っ……は、い……」
サイケさんを受け入れることが、どうしようもなく幸せに感じるのだ。
「っぁ、あっ!……んん、ひゃ、ぁ!」
「がく……」
激しく揺さぶられて首筋や胸を舐められて、どうしようもない気持ちよさと苦しさにだんだんと頭が回らなくなってきた。ただただサイケさんの熱に翻弄されてなにもわからなくなってしまう。
「がく、痛くない?くるしくない?」
「ん、ぁ……へえき、です、」
「じゃあ、きもちいい?」
足を抱えられてことさら深く奥を穿たれた。すぎる快感に、必死にサイケさんのコートを掴んで耐える。再度きもちいい?と尋ねてくるサイケさんに必死に頷くことで答えると、彼はまた酷く優しげで愛しさに満ちた瞳を僕に向けてくれた。
「そっか……よかった、っ」
「っあぁ!やだ、だめです、もぉ……!」
近づく限界を泣きながら訴えれば、律動がさらに激しくなった。中をぐちゃぐちゃにされて、自身も擦られて、体全身が痙攣する。
「っひ、ああぁぁっ……!」
「ん、くっ……」
自身の先端をこねくり回されて、白濁がどぶりと溢れでた。中も濡れる感触がして、サイケさんがぐたりと僕の上に倒れ込んでくる。
「がーく……」
「っは、ぁ……さいけ、さん……」
僕の顔をのぞき込んできた彼は、いつもの子供っぽい笑顔を、浮かべていた。
「だいすきだよ」
(ぼくも、です)
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(08/21)