「かわいい!」
思わずそう声を上げてしまうと、サイケさんはむぅっと頬を膨らませた。すねた子供の表情そのものにさらに愛らしさが募る。
『悪いねえサイケ、暫くそのままで頼むよ』
「暫くって、いつまで?」
『アップデートが終わるまで』
モニターの向こうで臨也さんがくすくすと笑っているけれど、正直臨也さんよりも僕はサイケさんの方に目が釘付けだ。サイケさんはいつもの目に鮮やかな白いコートとピンク色のヘッドフォン、そして艶やかな黒髪はそのままなのだが、今日はいつもと違う。何が違うって、そう、大きさだ。
今のサイケさんは臨也さん曰く省エネモードらしく、小さな子供みたいに体が小さくなっているのだ。容量の問題らしく、サイケさんのソフトウェアのアップデートが完了するまでは本体への負担を減らすため、こうして省エネモードになっているらしい。
『ま、最低限の機能しか動かせなくなってるけど普通に過ごす分には問題ないと思うから。よろしくねー』
ぷつりと臨也さんが移っていたモニターが消える。後に残されたのは僕の腰程度の大きさしかないサイケさんと僕の二人だけ。いつもは見上げる形だったサイケさんを見下ろしているといのが新鮮で、そして小さいサイケさんがとてつもなく可愛らしくて、笑みを止められずに彼の前にしゃがみこんだ。
「サイケさん、機嫌直して下さいよ」
「だってー……」
「小さいサイケさんも可愛いですよ」
僕としては心からの本心だったのだけど、サイケさんはますますぷぅっと頬を膨らませてしまう。
「も、ってなに!つまりおっきくても俺の事可愛いって思ってるわけ!?」
「いえ、そういう意味ではなくて……」
「俺はがっくんの前ではかっこよくいたいのに……」
しょんぼりと項垂れるサイケさんは、申し訳ないけどやっぱり可愛いとしか思えない。ぽんぽんとその頭をなでると、いつもより大きなピンク色の瞳がこちらを見上げてきた。
「普段のサイケさんは、とてもかっこいいです」
「ほんと?」
「はい。でも、今のサイケさんはとても可愛いです」
「……おれよりがっくんの方が可愛いのに」
「え?」
「なんでもない!」
少しだけ機嫌がよくなったのか、サイケさんはにまりと愛らしく笑みを浮かべると、んっ、と両腕を僕に向かって伸ばしてくる。
「だっこ、して!」
「え、は、はい……」
言われるがままサイケさんを抱き上げる。普段ならば絶対に出来ない事だ。これはこれで、なんだが新鮮で楽しい。腕の中に収まるサイケさんは、やっぱりとっても可愛かった。
なんて、微笑ましい事を考えていると。
「隙アリ!」
「んっ!?」
突然だった。唇にサイケさんの口がふれ、してやったりという風に彼が目の前で笑っている。突然の事に口をパクパクとしていると、また頬にちゅっと口付けられる。
「さ、サイケさん!」
「えへへ、この大きさだとがっくんに抱っこしてもらわないとキスできないからさあ」
だからもう一回、そう言って顔を寄せてくるサイケさんに驚いて、僕は思わず彼の体を落としてしまった。
「あー……いいなああいつら」
「何がです?」
「帝人君、俺らもキスしよう」
「さっさと論文書いて下さい」
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学人君がちっちゃいバージョンも書きたい
(01/24)