「がっくん」
「あ、サイケさん」

ぴこぴこと宙に浮かぶパネルを操作しながらフォルダの整理をしていると、後ろからぎゅっと抱きしめられてうわっと、体が傾く。けれど後ろから抱きついてきたサイケさんが抱えてくれたから、態勢は崩したものの倒れるには至らなかった。

「どうしたんですか、サイケさん」
「そろそろメンテの時間だよ」
「……もう、ですか?」
「うん、もう」

にっこり笑うサイケさんに顔が熱くなる。サイケさんは僕のそんな反応を見ながら可愛いーと笑うのだから、ますます恥ずかしくなった。

「ねえ、がっくんいい?」
「は、はい……あ、これだけ閉じるんでちょっと待って下さい」

開いていたフォルダを一旦閉じて、サイケさんにいいですよと合図をする。うん、と頷いたサイケさんは僕を抱えたまま器用にその場に腰を下ろして、壁に背中を預けた。

「それじゃ、はじめるね」
「はい……」
「いっつも思うんだけど、緊張しすぎだよがっくん。もっと楽にしてていいのに」
「っ、だって……なんとなく、恥ずかしい、し……」
「ふふ、がくとかわいー」

サイケさんは僕の頬に音を立ててキスをすると、目を閉じてプログラムを起動した。その瞬間、僕とサイケさんを淡いピンク色の球体が積み込む。まるでシャボン玉の中にいるような気分。と言っても僕はピクチャでしかシャボン玉を見た事がないから、実際にシャボン玉の内側がこうなっているのかは知らないけれど。
メンテの間は、外界との接触をこのシャボン玉で問答無用に断ち切られるのだ。

「がっくん、苦しかったりしたら言ってね」
「は、はい」

ふわりと体が軽くなる感覚がする。僕の体がサイケさんを思わせるピンク色の光に包まれて、彼に体を預ける。体の中を、プログラムを、システムを、全て探られて、そして優しくマッサージされる感触。体の奥の方にふわふわとした気持ち良さを感じる。

「ん、あ、ふ……」

勝手に漏れる声が押さえきれない。
サイケさんはあの日から僕専用のメンテ用プログラムに生まれ変わった。サイケさんが僕をメンテしたりチューニングしたりしてくれるから、僕は以前よりも自己管理に時間を割く事無く帝人君のパソコンの管理ができるようになった。それはとてもありがたい事でとても助かっているし、サイケさんに触れてもらえるのは嬉しいのだけど、でも、その。

……妙に、恥ずかしい。

「……んっ、あ、ぁ……」
「がっくん、きもちいい?」
「……は、い……」

メンテやクリーニングされる感覚はとても気持ち良くて、知らない内に口から洩れていく自分の声がとっても恥ずかしい。それにサイケさんがくすぐる様に僕の耳の裏とか項とかに触れるから、触れあっている事自体が気恥ずかしくて堪らない。

「んっ、さいけ、さん……」
「なーに?」
「ぼく、きもちわるく、ないですか……?」
「え?がっくんが?」
「っ、だって、こえ……」

自分でも聞くに堪えない声だと思う。なんでこんな声が出ちゃうのかは分からないけど、とても気持ち悪い。サイケさんにメンテをしてもらえるのは純粋に嬉しいし気持ち良いけど、この声だけは駄目だ。気持ち悪い。だから、サイケさんにこんな声を聞かせてしまうのは忍びない気がして。

「そんなことないよ……がっくんのこえ、可愛い」
「ふぁ……あっ、ん」
「だから何も考えないで、自然にしてて?」

俺が気持ち良くさせてあげるから、そう耳に直接声を拭きこまれて僕は安心した。サイケさんには、嫌われたくないから。

「がっくん、好きだよ」

頬にキスをされて、僕もですと返したら、サイケさんもすごく嬉しいそうに、笑った。








「……前から思ってたんですけど、ああいう仕様にしたの臨也さんですか」
「うん。ほら、あいつら所詮プログラムだろ?どんなに頑張っても人間みたいに性交渉が出来るわけじゃないからさ、せめてああいう形で快感を共有してもらおうと……」
「臨也さん」
「なに?」
「……才能の無駄遣いって言葉、知ってますか」
「あはは、それ誉めてくれてるんだよね?」
「……もういいです」
「あ、なんならあいつら、ほんとにセックスできる様に改良しよっか?」
「もう黙って下さい!」




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下品で申し訳ないです。
サイ学にはピュアでいて欲しいと最近思うようになりました


(09/12)






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