水底へ沈むように、ゆるやかに
カランカラン。軽い乾いた音が鳴り響く。
「いらっしゃい、Hiver」
ビュオオ…という音とともに軋んだ音をたてて扉が閉まる。閉まった衝撃でまた、扉の鈴が鳴った。
「よくわかったね」
「だって、こんな日に来るのは貴方以外にいないんだもの…あら?」
Hiverの後ろからひょこっと顔を出す双児。
「「Bon soir Mademoiselle」」
「Bon soir Violette,Hortense 今日はあなたたちも居るのね」
可愛いらしい姫君たちが久しぶりに来てくれたのでとても嬉しい。
「外は寒かったでしょ?今から温かいココアを煎れるからちょっと待っててね。…Hiverは何にする?」
「僕のはお金をとるんだね」
「当たり前でしょ。お金をとらないと生計が成り立ちませんから」
さっきお湯を沸かしておいてよかったわ。姫君たちを待たせなくて済むもの。
「どうぞ、熱いから気をつけてね」
「「Merci」」
一生懸命ココアを冷まそうと奮闘する姫君たちが可愛くて小さく笑みを零す。
「ナマエ」
「あ、Hiverは何にする?」
『あ、』と言った私に苦笑し注文を一言
「じゃあ、コーヒーを一つ」
「ん」
棚から一つのビンを取り出しフタを開ける。途端に、予め挽いておいたコーヒー豆の香ばしい香りが鼻孔を擽る。
「そういえば、Hiverを捜している人が来たのよ。えっと名前は確か…Savantだったかしら。紳士的な方だったわ」
コポコポと音を立ててお湯を注ぐ。
「あぁ、あの人が来たのか。」