過去拍手
露草
庭を見つめるのは、愛しい彼がいるから。
ザーザーと大粒の滴を落とす空。
私には鬱陶しい梅雨の時期だ。
雨が降れば外で遊ぶことができない。
つまり塔の中で暇を潰さなくてはならない。
梵天はいつもの如く寝ているし、空五倍子は膝枕になっている。
相手になってくれる人といえば露草しかいないのだが…
露草は今、庭で大粒の雨を嬉しそうに浴びている。
「露草、風邪ひくよ。」
「…」
これが私の最近の日課だ。
露草は気が済めば塔の中へと戻ってくる。
その時に手ぬぐいを渡すのも日課だ。
今日もそうだったけれど、一つだけ違うことがあった。
それは、受け取るときに「ありがとう」と言ったことだ。
しかも、顔を真っ赤にして。
「顔、真っ赤」
あまりにも真っ赤だったので言葉に出してしまった。
「なっ!悪かったな!」
「誰も悪いなんて言ってないよ〜だ」
ぷいっと顔を背ける露草。
「ねぇ露草。たまには私と遊んでよ」
「…気が向いたら、な」
こんな一日も悪くないかな、なんて。
でも、梅雨は早く終わってほしいな。