虹と共に



暇だ。
昨日から降り続いている雨はまだ止まない。
故に外に散策にいけないのだ。
まぁ、天座の三人衆がいないことも外に出られない理由なのだけれども。
(私が人間だから妖に見つかったら殺されてしまうからだ)


露草はいつもいつの間にかいなくなってるからいいとして、
空五倍子は何処へ行ったのだろうか…
いつもだったら梵に駆り出されない限り塔の何処かに居る筈なのに…

自室の開け放った障子戸の前に頬杖をつき、雨の降り続く外を眺め乍ら考えていた。


そういえば、梵が眠りについてからもう1週間が経ったな。
もう眠りから覚めたのかもしれない。
そう思い梵の部屋へと向かう。




梵の部屋の前に立つが、何一つ物音がしない。
そおっと襖を開けてみる。

横たわっている梵。
やっぱりまだ眠っているのか。

というか、なんなんだこの部屋の蒸し暑さは…
蒸しているのに汗一つかいていない梵は凄いと思う。

空気を入れ換える為に障子を開ける。
さっきよりも幾分か雨脚は弱まってきたようだ。


「はぁ…」


梵はいつになったら起きるのかな。
今まで長くて1週間だったからもう起きるのかな。

梵の寝顔は綺麗すぎる。
まあ、普段も綺麗なんだけど…
梵は女装しなくてもモテると思う。
私よりも確実に。


梵の肌触りたいな…
すべすべして気持ちよさそう。
でも、起きたら何言われるかわからないし。
大人しく外でも見ていることにしよう。


しとしと降り続く雨。
雨は好きなのだけれど、こう何日も降り続き、尚且つじめじめするのは嫌いだ。

早く雨止まないかな。
早く梵起きないかな。











「…ん……?」



外を眺めていたらいつの間にか眠っていたらしい。

何故か背中には寝てしまう前にはなかった温かさが。
というか、寧ろ暑い。



「名前」


梵、だ。
起きたばかりなのか、声がいつもより低くて掠れている。
なんというか、うん、色気があり過ぎて私は堪えられない!
耳元で名前を呼ばないで!
心臓に悪いから!

顔に熱が集まるのがわかる。
必死に平静を装おうとしてもだめだ。


「夜這いに来たのかい?」

「なわけないでしょ!!」


私が怒鳴っても梵は声を押し殺して笑うだけだ。


「そんな顔で言われても恐くもなんともないね」

寧ろそそられる。

私にとどめを刺すかのように艶やかに耳元で囁くのだ。


私は梵の声に弱いのだ。
だから、私は何も言えなくなる。
否、梵が私に何も言わせないようにする。





「名前」

「…」

「名前」

「……何」

「外を見てごらん」

「…わぁ!」


梵の言葉で窓の外を見やる。
あまりの美しさ感嘆。
いつの間にか雨は止み、橙の中に七色の橋が架かっているのだ。


「綺麗…」


今まで何度も虹を見たことはあるが、こんなに綺麗な虹は初めてだ。
そう見えるのは隣に愛おしい人がいるからなのだろうか。



「…梵。あのね、言いそびれたんだけど…」

「なんだい?」

「えっと…。梵、おはよう!」


言うと同時に私は梵に抱きつく。
何も言わない梵を見れば珍しく鳩が豆鉄砲を食ったような表情をしていた。


「梵?」

「全く、名前は…」




梵の綺麗な指が私の顎に手を添え持ち上げる。
目があった梵の表情はこれまた珍しく、いつもの俺様な笑顔ではなく、優しい柔らかな笑みだった。


「名前、おはよう」




梵の顔が近づいて来、梵の行動の意図に気付いた時にはもう、私の唇には梵の温かい其れが。



















「なっ!何よ!?」

「何って、目覚めの口吻けだよ」

「…っ」

「それ以上を教えてあげようかい?」

「結構です!」






(20090731)
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