青春と呼ぶのだろう


私の目の前には非常に面白くない光景が広がっている。十代目ぇー十代目ぇーと沢田くんに眩しいほどの笑顔を向ける獄寺。思わずお前は羊か、とツッコミたくなる。沢田くんの後ろの席の私には何故か見下したような表情しかしないのに!何を勘違いしているのか、獄寺は私が沢田くんのことを好きだと思っている。だから、目の敵なのか私に対しては何かとつっかかってくる。残念ながら、私が好きなのは沢田くんではない。私が好きなのはそう獄寺のこと。態度がでかくていじわるで喧嘩っ早いけど、悪態をつきながら何気に優しいところ。何故かわからないけどいつの間にか好きになっていた。

そういえば、先週くらいかな。
「お前に十代目は渡すさねぇ」とか言われたな。
獄寺は沢田くんのことが好きなのかな。じゃ、私は片思いなのか。いや、もともとからわかってたけどさ。なんか、複雑なのさ。私にもとびきりの笑顔をみせて欲しいな、とかもっと話したいなとか。…私って結構うざいね。まぁ、獄寺ファンの人からは私の席は羨ましいみたい(だって、獄寺ファンの人の視線が痛いんだもん!)だけど、私は席を替わりたい!だって、沢田くんと話している獄寺を見ると、イライラしてくるんだもん!沢田くんのせいじゃないよ、獄寺のせいだよ。

「名前、なんでそんなにふてくされた顔してんだ?」
武だ。武は私の家の隣に住んでいて昔から仲が良い、所謂幼馴染だ。勿論男子の仲で1番仲が良い。武の親衛隊の人たちには良く思われてないけどね。(今だって獄寺親衛隊の人と武親衛隊の視線が私に集まっていて正直つらい)
あぁ…武の爽やかな笑顔にイライラがさらに募る。
「武は楽しそうだね。」
「そりゃーな!」
とっても楽しそうに笑う武に私はとても八つ当たりをしそうになる気持ちを抑え、作り笑顔を向ける。

「おい野球馬鹿!十代目のお側に寄るんじゃねぇ!」
私と話している武は必然的に沢田くんの側にいるわけで。
「はは。悪りぃーな。ちょっと名前に用事があるからさ」
全然悪いなという気持ちが伝わらないほど爽やかに言ってのける武。え、ちょ、武親衛隊の目が恐ろしいんですけど!
周りを見てたら、獄寺と目があった。ばーかと口パクで言われ私のイライラは最高潮。でも、私は誰かに当たれるほど気が強くないから、机に伏した。

「名前?」
そうでした、忘れてました。
「あぁ…用事って何?」
「今日、おじさんとおばさん仕事で帰ってこないんだろ?だから、俺ん家で夕飯食ってけって、親父が言っててさ」
そういえば、朝お母さんが、今日はお父さんもお母さんも仕事で帰ってこれないから夜ご飯は武ちゃんのところで食べてねって言ってたような気が…
「あー…たぶんそんな事言ってた…かな」
「たぶんって…。俺今日補習あるから、待っててくれないか?」
「んーわかった」
ずっと、武親衛隊の目が痛かった!


放課後、沢田くんも補習があるから待っているという獄寺と一緒に教室で待っていた。なんか、獄寺と二人っきりになるなんて初めてだから無駄に緊張する…。
あ!そういえば、今日数学でわかんないとこがあったから先生に訊こうと思っていたけど訊くの忘れてた…。獄寺って頭良かったよねー。暇だし訊いてみようかな。

「ねー獄寺。獄寺って頭良いよね?」
「なんだよ」
「あのさ、この問題教えてくれない?」
「あ゛〜?この問題な。ここをこうして、こうするんだ」
「おお!なるほど」
獄寺は先生よりも教え方が上手く、解りやすかった。
ありがと獄寺、と前を向けばいつもよりかなり近い距離。
視線があえば、ほんのり赤くなる頬。
夕日なのか照れなのか、たぶん両方だろう。
自然と頬が緩む。

「…何笑ってんだよ」
「んー。こんな時間もいいなって思って」
「は?」
訝しげな顔をしてこっちを見る獄寺。遠まわしに言ったのがだめだったかな。

「えっとね、獄寺と二人きりもいいなって」
そう言って獄寺のほうを見れば、だんだん赤くなっていく獄寺の顔。
「な…何言ってんだよテメェは!」
乱暴に言うけれど、顔が真っ赤だから迫力がない。



「獄寺」
「何だよ!」
「好き」





(お…俺も、お前のことが…)
(何?)
(…ッ何でもねぇ!十代目のとこに行くぞ!)









オマケ
「補習終わったけど、教室に入れないね」
「だな」



 
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