溺レル


 高校二年になった四月。
 張り出されたクラス分けの表を見て勇人は私にこういった。

「また一緒のクラスだな。なんか名前とは腐れ縁だよな。」
 
 その言葉が嬉しくて仕方がなかった。
 どんな縁であれ、私と勇人を縁で結んでくれた神様に感謝した。


 勇人に抱く気持ちが恋心なのだと気づいたのは、中学三年生の時。
 クラスメイトだった友人に「私、栄口くんのことが好きなの。」なんて打ち明けられて、言葉が詰まった。私よりもずっと付き合いの短いあなたに、勇人の何がわかるの。そう思った気持ちは紛れもなく身勝手な嫉妬であった。

 小学校が一緒で、中学校も一緒で、偶然高校が一緒で、さらに偶然たびたびクラスが一緒になった。ただそれだけの偶然に甘えて、私は当たり前に勇人にとっての私は特別な位置にいると信じて疑わなかった。自分にとっての勇人がそうであるように。


 勇人が、ひとつ下の可愛い後輩の女の子と並んでいるのを見たときに、いかに自分が愚かな幻想を抱いていたのかを知った。


「勇人、彼女できたんだってね。」
「うん。」
「噂では聞いてたんだけどね。こないだ一緒に帰ってるの見て、あーほんとなんだって。可愛い子だね。」
「ありがと。」

 私は今この瞬間も、何も彼に告げることができなかった。

「私と勇人って腐れ縁かなぁ。」
「うん、そうだね。」

 勇人はきっと知っている。
 私がずっと言えなかった言葉を、きっと知っている。勇人の言葉があまりにも優しげで、そうなんだと悟った。気づいていても、きっと勇人もその気持ちをほっておいてくれる。無理に壊したりしないで、そのままにしてくれる。その優しさに甘えて私もその気持ちをほっておく。

 いつまでもこの関係が続くわけでないことは、気づいている。
 それでも私は諦めたり砕けたりすることができなくて、ただただ重たくなっていくばかりの恋心に溺れていく。






モ ドル



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -