気づいたら、春


「これでお前との腐れ縁も終わりだな。」
 そう言って笑う準太の横顔は、相変わらず綺麗すぎて、見惚れてしまうほど。

 いつもならうまく笑えるのに、おかしいな。今日はなんでか笑えない。

「桜、咲かなかったな。」

 ようやく日差しが和らいで、しかし桜の蕾はまだ固く。
 チャイムが響く。それは、終わりの合図。

「黙ってないでなんか言えよ。調子狂うだろ。」
 私は、準太の言葉に返すことができなかった。
 口を開けてしまったら、いろんなものが零れてしまいそうだったから。

 吹く風はまだ少し冷たく、春一番にはまだ遠く。
 
 私と準太の関係に、特別な名前なんてつかなかった。


 ずっと一緒だった。
 でも、ただそれだけだった。

 言わなかった。言えなかった。
 この想いが、このままそっと、終わりますように。
 綺麗なままで、終わりますように。

 
 気づいたらもう、そこには春。




モ ドル



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