02.自分勝手な恋の行く末


 一緒に帰ってたよね、だって。

 確かにこないだ、隆也と一緒に帰ったのは事実だ。
 部活が長引いて帰りが遅くなってしまった私と、部活帰りの隆也がばったり校門で会って、暗くて危ないし一応送ると言われて一緒に帰った。でも、それはただ隆也が面倒見がいいからってだけで、きっと私でなくても、クラスメイトや部活のマネージャーであっても同じことをしたのだろう。それに、一緒に帰ったのなんて、もう何年振りかもわからないくらい久しぶりのことだった。

 それでも私は、嬉しく思っていた。
 だからこそ、先ほどの女子の言葉が胸に刺さった。

 隆也にとっては、なんでもないことなんだ。
 それなのに私は、勝手に喜んでしまっただけなんだ。
 そんな自分が惨めで仕方がなかった。会話だってまともに続かなかったというのに、勝手に喜んで、勝手に舞い上がって……。


「苗字、どうかしたの?」

 横からかけられた声にはっとして、考え事から現実へと引き戻された。
 隣の席で水谷くんが心配そうにこちらを窺っている。
「もしかして具合悪い?」
「ううん、ちょっとぼんやりしてただけ。」
「ならいいけど、無理すんなよ。」
 大丈夫だよ、と笑って見せると、ならいいけど、と水谷くんも笑ってくれた。
 彼とはこないだの席替えで隣の席になり、水谷くんから気さくに話しかけてくれたおかげでちょこちょこ話をする程度の仲になった。

「そういえばさ、苗字って阿部と小学校から一緒なんだって?」
 その話題に、ぎくっと体が強張った。しかし悟られないように、必死に表情を取り繕う。
「阿部って昔からあんな偉そうなの?」
「え、そんな偉そうかな。」
 スッゲー偉そうだよ、なんていう水谷くんの声を聞きながら、私は少し安心した。少し過敏になりすぎていたのかもしれない。
「でもいいなー、幼馴染ってやつ。オレ、ずっと学校一緒って人はあんまりいないんだよね。」
「そんなにいいものでもないと思う。」
「そう?」
「……隆也は、あんまりよく思ってないみたい。」


 思わず本音が出てしまった。
 しまった、と思った。水谷くんも少し驚いた顔をしながらこちらを見ているのがわかったから、余計に焦ってしまい、うまくごまかすことができなかった。
 チャイムが鳴り、そのまま話は終わってしまった。



 隆也が私のことを好きではないと、気づいたのは中学生のときだった。もう何年も前のことだ。
 それなのに私は、諦めることもできず、告げることもできず、そのまま勝手に好きでいつづける。この恋心をどうやって消してしまえばいいのか分からない。

 ううん、本当は。

 消してしまいたくない。
 それどころか、きっと私は心のどこかで自分勝手に、能天気に、信じているんだ。

 きっといつか、いつの日か、と。




モ ドル



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