君の髪色(コンヒュ)
日本から帰国したペリー提督を待ち伏せていたのは、勝ち誇った顔をしたハリスだった。
「やぁペリー。日本の領事に任命されたよ」
「そうか良かったな」
まさかそれを言うためだけに、船が着くまでずっとここにいたのだろうか。仕事はないのかこの暇人。
そして軍人ではないからという理由で黒船に乗せてもらえなかったことを未だに根に持っているらしいハリスは、やたらとペリー提督に絡んでいる。提督は煩わしそうに返事をして、ハリスに背を向けた。
「ここにいたんですか、ハリスさん!」
タイミング良く誰かが走ってきてハリスの腕を掴んだ。まだ若い男だ。中年のハリスと並ぶと親子のように見える。だが、金髪のハリスと違い、男の髪色は艶やかな黒だった。
「もう!探しましたよ!」
「ごめんぬ」
怒られてしょんぼりと肩を落とすハリス。どちらが親かわからない。
「すみません、ペリーさん…」
「いや、君は悪くないよ」
申し訳なさそうに提督を見た視線が、ふとこちらを向く。
「えーと…」
「あ、コンテーです」
軽く頭を下げて自己紹介をすると、男がにっこり笑った。手を握られて一瞬思考が停止したが、あぁ握手だと気が付く。日本では挨拶に握手の習慣がなかったから忘れていたんだ、と自分自身に言い訳をして手を握り返した。
「僕はヘンリー・ヒュースケンと申します」
触れた手のひらから相手の体温が伝わってくる。それが心臓にまで届いたとき、僕は何かに落ちた気がした。
「…恋に落ちたんだな」
「何ですか急に」
「いや…お前に初めて会った時のこと思い出してた」
コンテーの部屋で寛ぎながら他愛のない会話をする。ヒュースケンは読んでいる本のページをめくって、クスッと笑った。
「コンテーさんが言うと軽い感じがしますね」
「僕すっごい一途だけど?」
「そういう発言が余計に」
本にしおりを挟んでぱたんと閉じる。
「…僕が日本に行っても浮気しないでくださいね」
「当たり前だろ。神に誓うよ」
「神ではなくて僕に」
「誓うよ」
顔を寄せてキスを交わす。コンテーの口元がいたずらっぽい笑みを見せた。
「お前こそ他のやつに目移りすんなよ。日本人は僕の愛する人と同じでみんな魅力的な黒髪だから」
「あぁ、それなら心配いりません」
ヒュースケンはふっと笑ってコンテーの耳元に唇を寄せた。
「僕の愛する人はとても魅力的な金髪ですから」
お互いに顔を見合わせて笑うともう一度、今度は深いキスを交わした。
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呉羽様からのフリリクでコンテー×ヒュースケンでした。
遅くなって申し訳ありません…
呉羽様ありがとうございました!
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