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5

「………あれ?なんで、柚さんが着けるんです…?」


それを着けるのは俺じゃないですか?

柚さんは混乱状態な俺の腰を持ち上げて、ピトと自身を充てがった。

待って。
これって、もしかして。


「純希くん。僕の、大きいよね?」

「…はい。大きいです…ね」

「最初はキツイかも知れないけど、おっきいの、気持ちいいよ?」


もしかしなくたって、これは俺が掘られる感じですか?


「…ほんとに?…ほんとに俺がコッチ側やるんですか…?」


「駄目、かな?」


駄目かな?なんて可愛く聞いておきながら、既に柚さんの先っぽは俺の中へ、その顔を埋めて来ていた。


「あ、あ、あっ、柚さん!!入っ、入ってます…!」

「あー、ほんとだね。じゃあもう入っちゃったし仕方ないよね。純希くんの、全部貰っちゃうね?」


そう言った途端、ズブズブとものすごい質量が俺の中に浸入してきた。目の前がチカチカするような衝撃に、思わず悲鳴のような声を上げてしまう。


「柚さ、っ……う」

しっかりと慣らしてくれたおかげか痛みはないが想像以上の圧迫感に息がつまる。生理的な涙が浮かぶ俺に柚さんは体を寄せてキスをしてくれた。


「分かる?全部入ったよ。純希くんいい子だから腕の外してあげるね」

「ゆ、柚さぁん…」


腕の拘束が外れて、俺は半分泣きながら柚さんの背中に腕を回して、抱き着いた。


「どうしたの?痛い?」

「…う、うん。痛くないです。ただ、嬉しくて」


柚さんが俺の言葉に首を傾げる。
そんな柚さんに向かって、俺は笑いかけた。


「…やっと、1つになれましたね」


想像していた未来とは少し、いやだいぶズレていたけれど、いま、俺と柚さんはゼロ距離だ。

今この世界で柚さんに一番近いのは俺だ。生徒会長でも、誰でもない…俺なんだ。

無性に嬉しくて、幸せで、胸がいっぱいになって、溢れる気持ちを隠し切れず柚さんを見つめると、もう一度キスを落としてくれた。


「……可愛すぎかよ」


「え?…っア!柚さ、っ…ああ」


呟かれた声は余りにも小さ過ぎて聞き取れなかった。
聞き返す俺を無視して柚さんが腰を打ち付けてきて、それどころじゃなくなってしまう。お腹の奥まで届く強い刺激に俺はもはや柚さんにしがみつく事しかできなくなってしまった。


でも…もう、なんでもいいや。
どっちが、どっちでも。
柚さんが気持ちいいならそれでいい。


柚さん、柚さん。



ーーー大好き。






◆ ◆ ◆ change side ◆ ◆ ◆







「で?昨日どうだった?あのあと」


中学の頃に仲良くなり、それからなんだかんだと気が合って高校も腐れ縁で同じになってしまった男が机に肘をついてニヤニヤしながらこちらを伺ってきた。

相変わらず下品な笑い方がよく似合う奴だ。


「おかげさまで。しっかり仲良くさせてもらいましたけど」

「ヤッたの?」

「ヤッた」


男が短く口笛を吹いて、手を叩いた。


「あーあ、可哀想に。純希くん、だっけ?ありゃ、だいぶお前に幻想抱いてたぜ。ショックで泣いたんじゃねーの?」

「さあ。どうだろうな」

「なんだよ、教えろよ。協力してやっただろ」

「は?普段俺がお前にどんだけ世話焼いてやってるか忘れたのか?」


そう言ってやると男は、態とらしく肩を竦めて、俺から目を逸らした。


「はいはい、そうですよね。大変お世話になっております、おまとめ役サマ」


相変わらず軽い口調のそいつはこの学校で最も人気の高い生徒会長サマ。

そして、俺はその生徒会長サマの親衛隊を束ねるまとめ役サマだ。


1年生の時に、早速人気者になったこいつにはすぐに親衛隊だなんてしょーもないものができた。まとめる人間が居ないと統制が取れないと言われ、こいつに全く興味のない俺が抜擢された。

ふざけんな、そんな面倒くさいことをこの俺がするわけねえだろ、と一蹴したのにこいつときたら

「俺の親衛隊だって周りに認識されてたら、お前のこと可愛いっつって近寄ってくる奴減るんじゃねーの?お互いにウィンウィンじゃね?」

と言ってきた。

俺は自分で言うのもなんだが、かなり可愛い顔をしている。ズボンを履いているというのに、何度女に間違われたか数えきれない。
だからか、俺に近寄ってくる奴はみんな総じて俺を抱きたいとトチ狂ったことを言ってくるわけだ。俺のチンコより小せえやつに掘られるなんてありえねえし、そもそも俺のより大きくたって掘らせる気はさらさらない。

そんなわけで、この高校に入ってから激増した野郎からのアプローチにかなりウンザリしていた俺は仕方なくあいつの話に乗ったのだ。


「それにしても、こんな可愛い顔した奴が巨根のバリタチなんて、俺だったら失神してるね」

「安心しろ。お前なんか抱く気にすらならねえから」

「俺だってお前なんかヤだよ。こんな表裏あり過ぎる奴。純希くんはまだ柚の表の顔しか知らねーんだろ?」

「あいつは可愛い俺の方が好きみたいだからな」

「はー、怖。裏の顔知ったらどんな顔するんだろうな。つーか、いつまでその可愛い僕っ子柚さんで行く気だよ」

「純希が望むならいつまでも」

「…はあ?なんだそれ。お前そんなキャラじゃねえだろ」


生徒会長サマが呆れたように言うが、そんなキャラがなんだと言われても仕方ない。純希が望むならいつまでも、言葉通りそのままの意味だ。


純希の為ならいつまでだって猫を被り続けられる。
かわいい、かわいい俺の純希。


必死に俺にしがみついて喘ぐ姿を思い出し、自然と笑みが零れた。



最初初めて会った時、珍しい奴が入ってきたなと思ったんだ。

顔だけは男前な生徒会長サマの親衛隊に入りたいだなんて言う奴は大抵俺みたいに女みたいな顔をしてる奴が多い。
純希は女みたいな顔もしてないし、性格も女々しくなく、どちらかというと元気でいかにも男子って感じの奴だった。
そんな奴がわざわざ生徒会長サマを慕って入ってくるなんてよっぽど惚れてんだな…なんて珍しいもの見るように接していたのをよく覚えてる。


純希が親衛隊に入ってから、何故か俺は懐かれたようで、たびたび声を掛けられ一緒に過ごす時間が増えていった。

でも、純希はあれのどこが良いのか逐一、生徒会長サマの動向をチェックし俺に知らせに来てくれる。
あいつが何してるかなんて興味ねえけど、あまりにも毎回嬉しそうに言ってくるから仕方なく聞いてやってた。

それにあいつが何してるかなんて、だいたい分かってる。惚れっぽく飽きやすい人間だ。
校内で見つける度に、違う男を連れ歩いていて「またか」と呆れ、つい真顔になってしまう。1人に絞ればいいものを、あれもこれもと手を出すから親衛隊の奴らがキーキー言い出してそれを抑えるのに手を取られる羽目になるんだ。この俺が。

本当に腹立たしい。



「純希くんは生徒会長のどこが好きなの?」



あんな誰でも彼でも手を出す男のどこがいいのかと不思議に思い、昼御飯まで一緒に食べるようになった純希に聞いてみたことがあった。

見た目の割りに優しいところだとか、生徒会で挨拶してる姿が格好いいだとかそんなことを言うのかと思ったら、意外にも顔だというシンプルな回答に笑いそうになったっけ。


顔ね。確かに、顔だけはいいな。

それは俺も納得だ。
生徒会長サマのどこが好きかと聞かれたら俺も強いて挙げるとすれば、顔くらいしかない。

だけど全然タイプじゃないし、ムスッとしてることが多いから可愛げがない。俺みたいに作り笑顔でも常にニコニコしてれば敵も作らず面倒事にも巻き込まれないのに、バカな奴。



それに比べて純希はいつも笑顔でうるさいくらい元気いっぱいだ。悩みなんて無いんじゃないかと思うくらい常に明るくて、引き摺られるようにこちらまで笑顔になってしまう。

親衛隊なんて糞面倒臭いことを押し付けられてイライラする日もあるが、純希が俺を見かける度に嬉しそうに走り寄って来てくれる姿はいつしか俺の楽しみになっていた。



あーあ、こんなに可愛いのに、なんであいつのこと好きなんだろ。
あんなのやめて俺にすれば可愛がってやるのに。

…俺があいつみたいに男らしい顔してたら、純希は俺のこと好きになってくれてたのかな。


ついそんな事を考えてしまっていると、ふいに前から手が伸びて来て純希が俺の手を握った。
冷え性の俺とは正反対の暖かい手に包み込まれ、視線を合わせると純希は物凄い緊張したような顔で、

「俺と、付き合ってくれませんか?」

と言った。


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