2 「面倒くせえからやりたくなかったけど、前の頭から言われて」 「…へぇ〜〜…」 一瞬冷や汗が出そうなったが、大丈夫だ。 いくら春さんがチームのリーダーになったとしても、俺が春さん以外の不良と以下省略。 「で、今日幹部で集まるの…忘れてた。安成も行こ?」 「んんん!?」 待て、待て、待て待て…!!! 「なななんで!?」 驚愕に目を見開くと、春さんは携帯を仕舞いながら飄々と答えた。 「上と付き合ってるってだけで他のチームから狙われることもあるし…顔見せ的な?毎日俺が一緒に居るから大丈夫だと思うけど」 それでも幹部に顔が知られてた方が何かと都合がいい、と春さんは言うが俺は全然都合が良くない。むしろ最高に悪い。 一気に雲行きの怪しい話になってきてないか? 「ああ、あ、……でも春さんが居てくれるなら大丈夫なんだよ、ね?だったら、別に…俺はいいかなぁ…」 オブラートに包みながら丁重にお断りするが、本音を言えば全力で拒否したい。 そんな不良の溜まり場なんて行きたくない!絶対に行きたくない!何があっても顔出したくない!!ビビリ上等。そんなとこ行ったらチキンハートが破裂するわ!! フルフルと小刻みに顔を左右に振る俺に、春さんが指を絡めて手を握ってくる。 ーーーあ。 「そうだけど、万が一ってこともあるから。…俺、安成になんかあったら生きてけない」 「お……俺……」 「安成…」 ヤバイ。 あれがくる。 この流れはあれが来てしまう。 「おねがい」 キターーーーー!! 春さんの必殺おねがい作戦! …これに何度折れて来たか。 最初は恐ろしくて頷いていたけど、最近は可愛く思えて聞いてあげたくなってしまう。 しかし、今日のは絶対に折れてはダメなやつだ。絶対に間違いなく後悔するし、最悪幹部不良達の目の前でチビるか泣き出すかしかねない。そんな生き恥晒すくらいなら、今勇気を出して断る方が己の身の為。 「ごめん、でも、俺…」 「1度だけでいいから。それ以上は言わない。俺だって安成を他の奴の目に晒したくない」 春さんは春さんで今日は引いてくれないらしい。押せ押せモードで、たったの1度だけ、という単語を強調してくる。 「…………1度だけ…?」 「うん」 「ほんとに?ほんとにほんとに1度だけ?…嘘付かない?」 「お前に嘘なんて付けない」 「………」 そして、俺は今日も安定の意志の弱さを発揮してsakuraの集会に参加することになった。 メンタル弱くて意思も弱いヘタレビビリなんて需要ある?ないよね?俺、自分が嫌になるよ。 だけど俺がOKを出した後の春さんの笑顔と言ったら、なんともまあ…… 最近、春さんはよく笑うんだ。 慣れたからと言ってもまだ彼に対して怖さを感じる部分は少なからずある。 しかしそれを忘れさせてくれるように春さんは俺に笑顔を見せてくれた。 それは単なる俺の思い上がりなのかも知れない。 でもこれが結構嬉しかったりもするのだ。 この笑顔の為ならたった数時間の恐怖…なんとか乗り越えてみせる!そう思えてしまう程の威力をも持つ。ビビリなこの俺がだぞ。 春さんの笑顔を見上げながら、頑張れ俺!と強く拳を握った。 | novel一覧へ | |