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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -

4

逆らう訳にも行かないので震えそうになりながら少しだけ口を開けてみた。

「そうそう。んで舌、出して」

「………」

うわあああん恥ずかしいよおおお…!!
泣きそうになりながら、そろりと舌先を口から前に出すと狩吉さんが俺の舌に自分の舌を絡ませてぬちゅ、と口付けた。

他人の舌を口内に入れさせる行為など、もちろん初めてで戸惑いを隠せない。深夜ドラマで見るような濃厚な口付けに固まっていると、狩吉さんが少しだけ口を離し低く掠れる声で「息はね、鼻でするんだよ」と笑いながら教えてくれた。
なるほど、酸欠で死にそうになりそうだったから、そのアドバイスは役に立ちそうだ。


「俺のも吸ってみて。噛んでもいいよ」

言われた通り狩吉さんがしてくれたようにやり返す。まるでエロの先生だ。さすが踏んでる場数が違う。でもいくら「いいよ」と言われたからと言っても噛み付くなんて俺には畏れ多くてできない。

「ん、…む」

口の中がお互いの唾液でドロドロだ。
気持ち悪いとは思わないし、どちらかといえばドキドキして頭がボー…としてくる。

狩吉さんの巧みなキスに意識を持っていかれていると、さり気なく手が俺の体に伸びてきたことに気付いた。

服の上から体の線を確かめるように撫でてくる手の平が何だか熱く感じる。

「……ぁふ…か、狩吉、さん…?」

俺の貧相な胸を這う手がキスに感じて立ってしまった乳首に触れ、きゅと指先で摘まれた。ビクンと跳ねる腰に、唇を離した狩吉さんはそのまま首筋にキスをしてくる。

「安成、じょうずだよ。気持ちいい」

「ほ、ほんとですか…えと、よかった…」

よかったのか?
よくわからないが褒められたので喜んでおこう。


「うん。安成のチューが気持ちいいから俺、勃っちゃった」

「………!?」

ストレート過ぎる言葉にギクリと顔が引きつってしまった。

まさか…まさかだけど、狩吉さん…俺と、セ、セ、…セック……

手が器用に制服のシャツの中に入り込んできて、あわあわと狩吉さんの腕を服の上から押さえつけた。

「ま、ま、待ってください…!この手は、この手はっ、なんですか…!?」

「さわっちゃだめ?」

「〜〜〜っ、だ、めです!!!」

「えっ」

まさか俺が拒否の言葉を吐くとは思わなかったのか、狩吉さんが顔を上げる。その顔は俺を睨みつけるように…いや、違うな。多分どういうこと?とでも言いたいのか疑問の浮かんだ顔だ。メンチ切るのに慣れ過ぎてるのか怖い顔にしか見えないが。


「だめなの?なんで?」

「だ、だって」

「安成にさわりたい」

「ひいい…だだだって!俺たち付き合ってまだっ…い、1日しか経ってません…!!」

「?」

なんで「?」なのおおおおお分かるでしょ!まだ1日しか経ってないのに、そんなとこまでするなんて時期尚早…!

「いくらなんでも早過ぎるかと…っ」

「……エッチはまだ早いってこと?」

そうそう、それ!てかやっぱりしようと思ってたんですね…!?うわーん!お母さん怖いよこの人ぉ…手が早すぎて童貞極めてる俺にはついていけないよぉ…


「そっ、そうです!…エッ……チっはまだ早いです!」

「付き合ってるのに?俺、ヤリ捨てなんてしないよ?」

「あわわ……その、付き合ってても…それはそれ、これはこれでっ…」


「…………ふーん」

俺のあまりにも必死な態度に納得してくれたのか狩吉さんの手が服からスルスルと出て行ってくれた。

「いつまで待てばいい?」

「えっ…」

「3日?」

3日って本気で言ってる!?この人!?

「さ、3ヶ月で!」

「無理」

一刀両断されてしまった。3ヶ月でも早い方だと思ったのに妥協点にもならないらしい。

「じゃあっ…2ヶ月ください!」

「そんなに待たされたら俺、優しくできないかも…」

イコール酷くするってこと?

「ううう……じゃあせめて、せめて1か月は俺に時間を…!…心の準備が、本当に…必要なんです…俺には」

なにせ未経験なことには必要以上にビビってしまう童貞ですから。

懇願するように頼み込むと、狩吉さんはようやく頷いてくれた。

「わかった。じゃあ1ヶ月後ね。浮気したら容赦なくヤルから」

「もっ…もも、勿論です!浮気なんてする訳ないでふッ」

ヤルってどっちの意味のヤルだろう、と一瞬考えてしまったがどっちだろうと恐ろしいことには変わりない。
ビビって語尾で噛むという失態を侵す俺を見て、狩吉さんが両手でぎゅうと抱き締めてきた。


「嘘だよ、安成。怖がらないで。…好き」


あの狩吉さんから聞こえてきたとは思えない程優しく囁かれる声が何だか心地いい。


ーーー怖いはずなのに、優しい。

そのギャップに未だ戸惑いは隠せないが、俺の要望を飲んでくれた狩吉さんに、もしかしたら怖いだけの人ではないのかも知れない、と少しの希望が見えた気がした。


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