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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -

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一応まだ恋人ではあるのかもしれないが、こんなのほぼ犯されてるようなものなのに、どうしてか…嫌なのに、感じてしまう。

「や…!…もう、…っ」

たまらず前を触ろうと手を伸ばすと、ぱしっと腕を取られそのまま後ろでまとめられてしまった。

「ッ!?うわ…!」

「勝手に触っちゃ駄目だろ。俺がいいって言うまでこっちで感じてなきゃ。それに前触らなくたってイケるよな」

「無理…だって…っ」

前を触らずイケたことなんて数回しか無い。さらにこんな無理矢理されて、後ろだけでイクなんて絶対に無理だ。


「静史、苦し…手、離して…!」


無理な体勢に体が悲鳴を上げている。床すれすれの場所でかろうじて顔を上げ、両手は背中で纏められているため俺は必然的にケツを静史に向かって突き出しているような無様な格好だ。電気だってつけたまんまできっと静史からは丸見えなんだろう。

羞恥心で消えて無くなりたくなる。


「お前、後ろからされるの好きじゃないもんな。俺の顔が見れないからって…あれほんと可愛い。でも本当は刺激が強くて気持ち良過ぎてヤバイんだろ?」

「気持ちよくなんかっ…ねえよ…!こんな格好いやだ…ッ!」

浮気相手の写真が脳裏を掠める。比べられている気がして嫌々をするように首を振った。
耳を塞ぎたくなる肌と肌がぶつかる生々しい音に涙が溢れてくる。激しく打ち付けてくる腰が憎くて口では否定の言葉を吐いたが、どうしても気持ちよくなってしまいそれさえも悔しくて涙がとめどなく溢れて止まらない。

「お願い、アッ、…静史…!手ぇ、やだ…っ……ンあっ」

「俺と別れないって約束してくれる?」

「……はっ、…!?」

「約束してくれるなら、手も離すし前も触ってやる。こんなとこじゃ体も痛いだろうからベッドに行こうよ」


だから早く約束しろよ、と静史が俺の背中にキスをする。

何をほざいてんだと罵倒したいのに、押し上げてくる快感に上手く言葉が出てこない。

どうしてそこまでして俺と別れたく無いなんて言うんだ。浮気したのは俺のことがそんな好きじゃなかったからだろ?


それなのに俺の心を引き留めるなんて、


ーーー狡いと思わないのか。



「………なんで?…もう…1番じゃないなら突き離せよ…!こんなの、俺…バカみたいじゃん…」



涙がボロボロ溢れて、床に落ちていく。

ボヤける視界。
こんなに涙が出たのは何年ぶりだろう。
こんなに心がぐしゃぐしゃに掻き乱された事が未だかつてあっただろうか。

あったとしても思い出せないくらい昔のような気がする。俺はお前と付き合ってから感情を上手くコントロールできないよ。


コンパに行った。
浮気したお前への当て付けのように。
いい子が居れば同じように浮気してやれ、と思っていたのに。
あの丘川の取引先の子は俺に気があるみたいだった。熱のこもった目で見つめられ手を触れられ、…何も感じなかった。


それどころか、

どうしてもお前の顔が浮かぶんだ。


浮気されたからと言って、すぐに嫌いになれるほど俺のお前への気持ちは薄っぺらくないみたいなんだよ。

ほんと馬鹿みたいだろ。



「……こんな想いすんの、もう嫌なんだ……俺にはキツイよ…」



ーーー心がここに無いのなら、もう、いっそ手離してくれよ


そんな想いを込めて呟くと、掴まれていた腕が上部に引き上げられて静史の腕が腹に回った。繋がったまま体を反転させられ、お腹の中でグリッと腸壁を抉る。

「ひっ、や…!な、なにッ」


何だか久しぶりに見る気がしてしまう静史は相変わらず美麗なんだけど、俺以上に疲弊しボロボロになったような顔をしていた。


「……静史…」


それでも苦しかった体勢から、背中が床に触れたことに安堵の息が漏れる。
とは言っても静史は俺の中に入ったままんだし、組み敷かれていることには変わりないのだが、対面し顔を見ることができてほんの少しホッとした。

なのに静史は見たこともないような表情で、涙でぐしゃぐしゃになっているであろう俺の顔を見降ろすと、何度も口付けを交わした唇をゆっくりと開いた。



「なにを、言ってるんだ…?俺の1番は京太だよ。…1番というか2番も3番も京太だし、初めて会った時から俺の心には京太しかいない」



「………堂々巡りだよ、静史。じゃあなんで浮気したんだって、俺、そんなんじゃ納得できねえよ。ちゃんと言ってくれ…」

「…………」

またもや黙る静史。

やはり喋る気はないのか…と悲しい気持ちに襲われそうになったとき、静史の口が動いた。


「…言ったら別れない…?嫌いにならない…?俺の傍から離れないか…?」


「……内容による。けど、話してくれないなら100%嫌いになるし別れるよ」



「…………なら…分かった。言う」

静史は、ゆっくりと頷いた。


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