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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -

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「どうもー!丘川でぇす!気軽に丘川ちゃんて呼んでね〜。聞いてると思うから言っちゃうけど水下っつー会社の営業やってまぁす。ほんで、左に居るのが同じく営業で成績トップの柴くん!」

「どうも、柴っす。柴くんでも、柴でも好きに呼んでね」

「えー!成績トップなんですか〜?すごぉい!」

「意外でしょー?口だけは達者だから、俺なんかいっつも言い負かされちゃうのよ!」

「おい」

「ちなみに丘川ちゃんは身長186センチです!」

「え、なにその唐突なアピール」

「あはは、高いですねー!背の高い人あたし好きです〜」

「こいつ確かにデカイけどほんと身長だけだから。騙されちゃ駄目だよー」

「こらこら、柴くん。いきなり人を貶すのやめなさいって。この通り柴は口が達者なだけじゃなくて口も悪いから気をつけてね!てか、2人とも何歳〜?」


丘川がテーブルに前のめりになる。想像より可愛く、反応の良いコンパ相手に丘川のテンションは分かりやすく上がっていた。俺の予想では取引先の女の子が連れてきたという友達の方が好みに違いない。

それにしても丘川め。わざわざ社名を強調したな。
確かに俺達の勤める会社はそれなりに名の知れた企業であり、多分名前を言えばこの年齢にしては年収が高いことが相手に伝わるはずだ。国内のみではあるがいわゆる商社マンというやつで…ガチかよ、丘川。

なんて心の中で毒づきながらも、久々に女の子との飲みに新鮮な気持ちにはなっていた。

「でも営業ってやっぱ大変ですよねえ?接待とか多そう〜。あたし嫉妬深いから心配になるかもぉ」

「多いけどおっさん相手ばっかだよ。それに女の子の嫉妬って可愛くて俺結構好きだな〜」

ニコリと笑って言えば、丘川の取引先の女の子は嬉しそうに笑い返してきた。

「えぇ、ほんとですか?ウザくない?あたしよくそれでフラれちゃうんですよ〜」

「んなことないよ。なぁ、丘川」

「そうそう!嫉妬されるってそれだけ愛されてるってことにも繋がるんじゃないかと俺は思いまーす」



だよな、やっぱり。
嫉妬、されないってことは、そういうことだよな。

丘川の言葉に勝手に出来たばかりの傷を抉られた。


「お待たせしました。生2つとカシスオレンジとピーチフィズです」

「はーい。やっぱ女の子は可愛いの飲むねぇ〜」

「ごめんな、俺らおっさんで」

「そんなことないです〜!あたしたちお酒弱くて強いの飲めなくてぇ…」



店員が個室の扉を叩き、注文していた飲み物が届いて、本格的にコンパが盛り上がってきた。

「ごめん、ちょっと俺トイレ」

飲みの席も中盤に差し掛かった頃に、尿意を感じ席を立った。トイレで用を足して手を洗った後、なかなか見る事ができなかった携帯を見ると静史から連絡が入っていた。

《何時に帰ってくる?》という短い文章。

また前回のように電話をかけて来られては困るので、今回は忘れずに静史には伝えていた。もちろんコンパとは口が裂けても言えないので、丘川と飲むとしか伝えていないが。

しかしコンパだとバレた所できっと静史は怒らないだろう。

静史だって、浮気したんだ。
いいだろ、別に。コンパくらい。
いい子が居たら、一夜くらい共にしちゃうかもしれないけど。
先に浮気をしたのはお前だからさ。

ドロドロの感情が腹の底から湧き上がってくる。どうしようもない。俺は静史の浮気を笑って許せるほど器はデカくないんだ。


俺は返事を返すのも億劫になり、何もせず携帯画面を閉じ丘川達の元に戻った。



「あ、もうこんな時間か。2人とも時間大丈夫?」

酔うのが早い丘川のハイテンショントークでその場はかなり盛り上がり、ふと時計を見ると23時を少し過ぎた頃になっていた。

「大丈夫ですよぉ、まだ電車ありますし。次、行きます?」

「お!行っちゃう行っちゃうー!最近出来たオシャレなバーがあんだけど、そこはどぉ?」

顔を真っ赤にした丘川が何杯目か分からないビールをゴクッと飲み干して笑顔で提案したが、それはまさかこの間行ったとこか?

早速常連アピールか丘川。早いな。

「え〜、バーなんて初めて行きます!行ってみたぁい」

「よぉし、丘川ちゃんが奢ったげるからね!じゃ、とりあえずここ出よっか。柴くんお会計呼んでくださ〜い」

「はいはい」

マジで次も行くのか。
ちょっともう俺帰りたいんだけど。
丘川は女の子がいるから、酔いが醒めていたとしてもテンションが高いままでよく分からない。もうお気に入りの子と2人で抜ければいいじゃないか。


「柴くんも行きますよねえ?」


俺のテンションを察したのか、取引先の女の子がスリッと手を伸ばしてチワワのように首を傾げた。俺の手に触れる手はお酒のせいか暖かい。顔を見ると丘川程ではないが頬が赤く、トイレで塗り直してきたのか赤い唇が俺を誘惑するように艶めいていた。


そんな彼女を見ながら、俺はやっぱり…と思うのだ。


「お待たせ致しました。お会計でお間違いないでしょうか?」

「あ、はい。じゃ女の子は先に出てて待ってて」

「いいんですか〜!?ごちそうさまですぅ」

女の子2人は嬉しそうににっこり笑うとブランド物のカバンを持って先に外に出て行った。最初から払わせる気など皆無ではあったが、見目が良い分、やはり奢られ慣れてるな。可愛い子は特である。

「柴くぅん、スマートだねえ。さっすが!」

丘川が財布から札を何枚か出しながらケラケラと笑う。これは多分まだ酔ってるな。丘川が出した分の残りを俺も出しながら楽しそうな丘川に向かって溜息をついた。

「おい、俺もう帰りたいんだけど。ほんとにバー行くのか?」

「こんなに盛り上がっててバイバイはないでしょー!行こうよ、柴ぁ。あの子柴狙ってたしぃ柴はどうなのよ」


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