11 まさか接触してきた先輩達に気に入られているとは、さすがSクラス級の美人は格が違うな。想像の遥か上を行ってくれるわ。しかもこの先輩達ちょっとマゾじゃない? 「でも一応レイヤきゅんには謝っといてくれよ、頼む」 「なんなら、俺ら自ら謝るからレイヤきゅんの連絡先教えてくんねえ?」 「あ!それいい!ID教えてよ」 「…あの、すんませんけど俺あいつの連絡先知らないっす」 連絡先を教えろと先ほどよりも間を詰められ、はたから見ればカツアゲされてる俺の図。 先輩達に言いながら、そういえば俺あいつの連絡先知らねえんだよな、と少々虚しくなった。でも部屋も教室も一緒だと連絡する必要なんて全く無い。 「知んねえとか嘘っしょ?別に悪用とかしねえからさー」 「ただ謝りてえだけなのよ、俺ら。お願いだよ。レイヤきゅんのお友だちクン」 「いやだから、ほんとに知らないんですって!」 引き下がる先輩達に面倒く……戸惑い、どうしたものかと考えるが、知らないものは知らないしどうしようもない。 「あ!電話番号でもいいよ」 「携帯越しにレイヤきゅんの声聞けんの!?うおおおおおパネェェェ」 「電話番号!電話番号くれ!!」 「お友だちクン!頼む!」 「IDも知らないのに電話番号なんてもっと知るわけねえだろ…!!」 「そうそう〜それにそのレイヤきゅんは俺のコイビトなんで電話番号は渡せないっすね」 困り切ってつい言葉が荒くなったその時。 先輩達の背後から聞き慣れた声が聞こえてきて、条件反射のように壁のように立ちはだかっていた先輩ズが体をずらした。 そして、出来上がった隙間から見えた姿は声の通り先輩達と同じくらい背の高い親友、律の姿だった。 顔には爽やかな笑顔を浮かべている。 りりり律ーーーーー!!! 心の中で俺、号泣。 抱き締めてるレベルで感動してしまった。 「律!」 俺は今がチャンス!と先輩達の隙間を縫って入り口に居た律の元に駆け寄る。律の傍で律のつけてるお馴染みの香水を嗅いだ瞬間、一気に安堵した。 運動をした後だというのに嫌な臭いは一切しない。 イケメンマジックかコノヤロー! でも今だけは全く苛つかないぞコノヤロー!! 「大好きだ律!」 「俺はきらい」 「なんで!?」 感極まって愛の告白をしたというのに、ズバッと断られてしまった。予想外だ。 「センパーイ、そういうことなんであいつには手、出さないでくださいね」 「……チッ。いいよなーイケメンは。あんな美人とヤリたい放題なんてよ」 「すんません、イケメンで」 サラリと告げる律に、先輩相手になんてことを言うんだと驚愕しているとグッと腕を掴まれ引き寄せられる。 「あと、こいつから玲哉の情報聞き出そうとしても無駄ですよ。連絡先知らないってのも本当ですし、センパイ方の役には立ちません」 「役に立たない…」 もっと他の言い方は無いんかい、とツッコミたい。 「なので玲哉目的で、こいつにも近寄らないで下さいね。…センパイ達の顔、しっかり覚えましたから」 「!」 「……じゃあ、失礼しまーす」 用は済んだとばかりに律はくるり、と先輩達に背を向けさっさと歩き出してしまう。腕を掴まれたままの俺はもちろん引き摺られるように律の後について保健室を出る。 出る間際、先程までうるさいくらいだったのに嫌に静かな彼らをチラリと振り返ると皆一様に口を開けポカーン顔だった。 それって一体どういう心境の表れなんですかね。 「あのー…律。俺1人で歩けるよ?」 腕を掴まれたまま廊下をどんどん歩いていく律に、そろそろ腕を離してくれよ、という意思をさりげなく伝えるとようやく掴んだままだったことに気付いたのか律の手が離れた。 周りにはまだ生徒の姿が見えないので、まだ閉会式中なのだろう。 「やー、助かったわ。閉会式抜けて来てくれたの?あ、優勝おめでとな」 「…智」 「どした?」 律がくるりと俺を振り返る。 ーーーあれ、つか今… 「なにやってんの?」 先程まで浮かべていた爽やかな笑顔が消えていた。 「…え?」 「試合、応援しとくって言ったよね?なんで居ないの?それにどうして保健室なんかに居たの?」 「…それは…ごめん」 「ごめんじゃなくて、俺はなんでって聞いてるんだけど」 「………」 お、怒ってる…よな。やべえ。 そういや応援しててね、と言われたのに抜け出して織田探してたんだった。 「……一応、その…織田が心配で」 「玲哉?」 「もちろん変な意味じゃねえよ!?…同室者だし、律の恋人だし、薫くんの言ってたことが気になって何処にいるのか心配になっただけで」 「…それで玲哉は見つかったの?」 「おう…。保健室で寝てた」 俺の言葉に律の表情が少しだけ和らいだ気がした。やはり気になっていたんだろう。 「あいつ、ほんと、自由だよなーっ?」 「で、玲哉すぐに見つかったのに、智はどうして直ぐに戻って来なかった?」 話を逸らしたくて織田の話題に持っていこうとしたが、今日の律は虫の居所が悪いというやつなのかもしれない。 俺が織田と2人、保健室で何かしていたとでも思ってるのかな。んなわけないのに。 ……いや、んなわけあるか。今日は。 ああ………織田のバカ……… もどる | すすむ | 目次へもどる | |