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「#幼馴染」のBL小説を読む
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6

律とくだらない話で戯れていると、階下から試合の終了を知らせる音が聞こえた。

「あ、決まった」

言葉通り決勝戦の相手も決まったようで律が席を立つ。

「あー!村チン負けてんじゃん!体育館100周決定だねー」

律の言う村チンがどれかは分からないが、多分あの床に両手両膝をついてこの世の終わりみたいになってるのがそうだろう。可哀想に…顧問から怒られた挙句ペナルティーまで課せられるなんて、運動部怖い。体力に自信ある奴からしたら体育館100周がどれほどのものなのか知らないが、俺からしたら地獄だ。


立ち上がった律はキョロキョロと辺りを回して、ん〜と首をひねる。俺も同じように立ち上がって律を見上げた。

「織田だろ?俺、探してくるよ」

「あー、大丈夫大丈夫。こんだけ帰ってこないんだから多分保健室で休んでるんでしょ。可哀想だし俺だけで行くよ」

「俺はもう出ないぞ!?」

決勝戦でなんて使い物にならないに決まってる。もう本当にバスケは懲り懲りだ!
俺の必死な顔で察したのか律が苦笑して、俺の頭をポンと叩く。

「わかってるよ〜。智ちゃんはしっかりここで俺の勇姿を見ててね」

そう言うと律は軽快な足取りで階段を降りて行った。


「……よし」


俺はと言うと見ててねと言われたが、やはりどうしても織田の行方が気になって仕方ないので、律には悪いがそっと観覧席を抜け出ることにした。

試合の始まる音と応援と歓声が聞こえる賑やかな体育館を後にして、俺はとりあえず保健室に足を向ける。律の言うことが正しければ織田は保健室で休んでるはずだ。
この前場所も教えたし一人でも行けるとは思うがどうだろう。別段方向音痴でもなさそうではあるが…



「……ん?」

保健室に向かう途中、前方からなんだかフラフラと足取りの怪しい生徒が歩いてきているのが目に入った。

あの華奢な体つきには見覚えがある。


「薫くん?」


下を向いて歩いて来ているが、あれは多分薫くんだ。
姿が見えなくなったと思ったらこんなところにいたのか。織田は居ないみたいだけどどうしたんだろ。明らかに様子がおかしい。

織田の件もあるし、声を掛けようとそのまま近寄ると、俺の目の前で大きく片側に揺れた。
壁際をとろとろ歩いていたものだから薫くんはそのまま壁に激突しそうになって、俺は咄嗟に腕を差し伸べていた。


「あっ、ぶね!!…おい、大丈夫か?」

片手だけでは支え切れず両手で薫くんの肩を支えると、やっと俺の存在に気付いたのかハッと顔を上げる。


「うわぁ!!?」


その瞬間、薫くんはまるで化け物にでも遭遇したかのように悲鳴をあげて、俺の腕を振り払った。何を考え込んでいたのか知らないが、そこまで驚かれるとさすがに傷付くし、何よりこっちがビックリするわ。

しかし薫くんの顔を見て俺はさらに驚いてしまった。


「…え…マジで何があったの…」


俺が言える台詞では無いかも知れないが、顔を上げた薫くんは目元を赤く潤ませていて…というかほぼ泣き顔で、泣きじゃくった後みたいに酷い顔だった。
俺は生憎そっちの趣味を持ち合わせていないので驚いただけだが、きっとドS(勝手に言ってる)の律なら可愛いねと囁くに違いない。

「何事だよ…」

「キミには関係ない!」

明らかに弱り切ったチワワに強く当たることができず、俺はなるべく優しく声を掛けようとしたのに、薫くんは非情にも俺の前から飛び退いてダッと走り去ってしまった。


何故か怒られて、1人取り残された俺。


「……えー……」


訳が分からなすぎて俺は少しの間その場に棒立ちだった。


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