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「#幼馴染」のBL小説を読む
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「………………やべぇ」

階下で広がる白熱した試合展開に俺は知らず知らずのうちに息を飲んだ。

…いや、白熱というのは語弊があるかも知れない。


ピーーーーー!

甲高い音と共に審判を務めていた多分見たことがあるからバスケ部員が声高々に叫んだ。


「76-22で2Bの勝ちです!」


2Bとは俺らのクラスである。勝ちました。しかもトリプルスコアの圧勝で。


ワアアアアと周りから野太い歓声が上がる。そこはなんだかんだ言っても男子校。迫力がすごい。

簡単に説明してしまえば律の先制シュートから始まった試合は、まさかの石田くんの好プレーに続き、ジャンプシュートや長身を生かした派手なダンクを決めたのがまたもや律。
そして絶妙なパス回しと遠距離からスリーポイントという高得点を叩き出して行ったのが織田だった。

織田め、経験者だと語るだけのことはあるな。

周りがどういう動きをしているのか正確に捉えることができているようでパス周しが本当に上手い。律ほどバスケに詳しくない俺でも織田がかなりの実力者なのは見てとれた。
確かにこれならバスケ部が速攻で歓迎会を開いた意味がよく分かるし、容姿だけなく実力込みでの熱烈歓迎だったわけだ。

律の試合は何度か見たことがあったし、去年バスケで一緒だったのであいつが上手いのは分かりきっていたが、織田がここまで出来る奴だとは思わなかった。
ついでに言えば、コート内を颯爽と駆ける蜂蜜色の髪と、ほんのり汗を纏うしっとりした見惚れる程の横顔はまるで天使のお戯れ。動きも必死感が無く余裕があるので余計だ。

あまりのレベルの違いに途中から相手チームの戦意を喪失させてしまった程だし。まるで容赦がない。


「……なにあれ…」

「律くん格好良かった…」

「律くんが格好いいのは当たり前だよ!それより、あの人…ねえ、あの人名前なんて言うの?」

「え!?し、知らないよ!律くんの彼氏でしょ?」


「……どうしよう…僕、なんかドキドキする…」


「えっ」

なっ、なな、なんだってええええええ!?

安定の盗み聞……周りの声に耳を澄ませてみればまさかの台詞。律信者の中から恨まれるはずの織田に対しての一言に思わず心の中で叫んでしまった。いや、ちょっと声にも出た。


なんで!?

あいつらのような女の子みたいな顔をした奴は律みたいに背が高くて男らしくて格好いいのが好きなんだとばかり思っていた。

まさか織田みたいな美人にときめくとは。


ーーーまあ、確かに試合中の織田を、悔しいがちょっと格好いいと思ってしまったのは事実だけどさ…


しかしこれは運動できない奴が運動できる奴に憧れるのと同じことだと思う。

初めて織田のいい方向でのギャップを発見してしまい、悔しいような嬉しいような何とも言えない気持ちになる。
複雑な気持ちのまま階下を見ていれば律が嬉しそうに織田の細い体に抱き付いていた。その途端周りから上がる悲鳴。果たしてどちらに対しての悲鳴なのかは分からないが、バスケ部の奴らからは「ふざけんな律ー!」「やめろ!離れろ!イチャつくなー!」「おっ、織田くうぅん…!」と必死な声が聞こえてきて思わず吹き出しそうになった。

抱き付かれた当の織田は慣れているのか、特に気にした様子もなく律の背中を軽く叩いて好意に応えている。くそー、お似合いだな。今更ながらあの2人の横に並んで歩けていた自分の精神力の高さを褒め称えたくなるわ。


その後も順調に勝ち進んでいった律たちだったがあるクラスに当たった瞬間、問題が発生した。

「な、なにあれ…最低…!今の絶対ワザとだよ!」

「ここからなら分かるのに…審判の人からは見えないのかな…」

「…あんなのヒドイよ…!ルール違反だよね!?」


俺も今回ばかりは同感だよ、可愛い系。

ベンチに座ったまま観戦していた俺だったが、目を見張るほど嫌な展開に流石に腰が浮いた。


「なんだよ、あいつら…!」


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