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「#幼馴染」のBL小説を読む
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「律ー!がんばれよー!バスケ部に恥かかせんなー!」

「顧問が負けたら放課後体育館100周だっつってたぞー!」

「お、お、織田くんも頑張れー!」


律ファンとは違うところから上がった声援に、少し離れた場所でバスケ部男子達の塊を見つけた。やっぱバスケ部はバスケ選択するんだな。

1年の時に初めて球技大会に参加したときには、運動部は同じ種目を選択できないと勝手に思っていたが、実際そんな事は無く本当に自由に選択ができることに驚いた。
ただ、やはり現役部員には顧問から厳しい目で見られ、不甲斐ない負け方をすると体育館100周よりもやばいペナルティーが掛けられると律に聞いた。
それでもわざわざバスケを選ぶということは、律含めこいつらはそれなりにみんな自信があるということで…

運動が苦手な俺からしたら信じられない。

だけどバスケ部の奴らは他の運動部の奴らよりサッパリとしていて俺は好きだ。バレー部も変な噂は聞かないからもしかしたら同じような感じなのかも知れないが、律としか関わっていない俺はバスケ部の内情しか知らない。

ついでに言えば俺はサッカー部の奴らが苦手。真面目なのもいるとは思うがチャラい奴が目立つ。ヤンチャというか。もちろん関わりが無いので関係はないが。


バスケ部の声にコートの中に入った律が顔を上げた。
隣にはもちろん織田だ。織田はバスケ部から緊張しまくりな声で声援をかけられ、面倒臭そうにではあるが一応チラリと声のした方を見上げていた。
律と並ぶ織田はそれはもう美男美女と見紛う華やかさで、俺は一瞬目を細める。なんと眩しいことか。

一方の律はバスケ部に向かって爽やかな笑顔でヒラヒラと手を振り、律信者が色めき立った。言っても意味ないけどお前らに向かって手を振ったわけじゃ無いぞ。

「…!…うわ」

俺はベンチに座ったまま、その様子を眺めていただけだったが、律が目ざとく俺を見つけ、目が合うと嬉しそうにこちらに向かって両手で手を振ってきやがった。

思わず、うわっと心の声が漏れる。

無視する訳にもいかず手を上げて応えると、案の定周りの目がこちらに向いた。


「…出たよ、あいつだよ、律くんの」

「というか律くんの隣に居るのがあいつの彼氏じゃ無かったの?」

「それなんか誤解らしいよ。本当は律くんとあの綺麗な人が付き合ってるみたい」

「えー!?そうなの!?ショック…」

「確かにショックだけど、あいつが傍に居るより全然マシだよ。それに僕あんな綺麗な人に勝てる気がしないし…」


聞こえてますけど。

いや、分かってる。わざわざ聞こえるように言ってんだろ。つーかお前らもっと大きい声で言ってみてくれよ。下にいる織田にも聞こえるように!あの見た目だけなら女神様レベルの織田くんに「綺麗〜」って!きっとブチ切れてくれるからさぁ!!

「………やめよ」

ここ最近、陰口が多すぎて若干短気になっている俺である。短気は損気。織田とキャラが被っちゃうからカルシウム摂取しなきゃ。


嫉妬と羨望の眼差しを向けられているであろう織田を見ると、律がこちらに手を振ったからかあいつも俺を見ていた。

黄金比率で配置されたような大きな目と視線が交差する。

「………」

いくら見慣れたと言っても、離れた場所からでも分かる整い過ぎた顔立ちの良さに本当に綺麗な奴だと再確認してしまう。


織田は律みたいに笑顔で手を振ってくることもなく、もちろん俺も手を上げたりもしない。ただ数秒視線があっただけで、織田は律に何か話し掛けられたのか目線を逸らして律に向き直っていた。


「ねー、なんかあの人さっきこっち見てなかった?」

「うん、僕目が合ったよ。ドキッとしちゃった」

「あんな男の人もいるんだね…」


俺は1人で喋る相手も居ないので、どうしても周りの会話が耳に入って来てしまう。可愛いグループの男子達が律の時とは違って静かに興奮しているのが聞こえた。

なんだよ、さっきまで律を取られてショックだなんだと言っていたのに。顔がいいってだけで、そんな反応変えちゃってさ。

俺にはあり得ない態度の変化だ。なんだか少し悔しいし、織田の見た目8割論はあながち間違っちゃいないのかもしれない。


複雑な気持ちになっていると、本日もう何度聞いたか分からないホイッスルの音が耳に飛び込んできた。


やっと試合スタートだ。


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