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「#幼馴染」のBL小説を読む
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渾身の力の限りを尽くして専用の球体を投げ合い、只ひたすらに敵を撃ち落とし全滅を目標とする恐怖のGAME。

もう足を洗ってから何年経つだろう…2年くらいか?


うん、ドッチボールなんて久しぶりだ。


早々にボールを当てられ外野に放たれた俺は、あまりの暇さにドッチボールを如何に格好良く言えるかを真剣に考えていた。



毎年5月に開催される全校生徒対抗の球技大会の今日は雨も降らずに晴れたいい天気だ。これっぽっちも思って無いけど絶好のスポーツ日和ってやつだわ!

競技別で優勝したクラスには寮内の食堂1ヶ月食べ放題チケットなるものが授与される。1ヶ月も食べ放題という超太っ腹なご褒美に食欲旺盛な男子高校生達は目の色を変えて挑んでいた。

それは他よりルールが少なく誰でもできるパッと見、緩そうなドッチボールも例外では無い。
部活はフットボールしてますみたいな腕力のあるやつにボールが渡った瞬間の恐怖たるや…お願いだから痛くしないで、というやつである。


全ての競技がトーナメント式で進んでいくので、ドッチボールも勝てば勝つほど痛い目に合う。
もうはなから当てることを考えてない俺は、どれだれ痛い思いをしないかということしか考えてなかった。

なんで俺ドッチボールなんかにしたんだろ…

食堂1ヶ月食べ放題は魅力的だが、悲しいかな。俺、自炊派だし。正直、みなさん大人しく降参しましょうと声を大にして言いたいくらいだ。

負けることは恥ずかしくない。
負けを知って人は強くなるのです。


そうは言っても、そんなこと流石に口には出せないのでひたすらドッチボールを厨二っぽく言い換えて時間を潰していたわけだが、

なんと!

俺のもう痛い目に遭いたくない願望が天に通じたのか、俺たちのクラスは初戦敗退という素晴らしい結果を叩き出した。


「わー、くやしいなあ」

悔しがるクラスメイト達に合わせて俺もなるべく気持ちを込めて呟いた。
食べ放題がー!と叫んで肩を抱き合って悔しがれる友達がいないのが残念だ。はは。

ちなみに敗者復活戦なんて弱きものに手を差し伸べるようなものは存在しない。

負けた奴らは同じクラスの他の試合応援しろよ、ということだろう。観客がいる方が盛り上がるしな。



そんなわけで、俺は早速バスケットボールの試合が行われている体育館に向かっていた。

ちなみに体育館ではバスケ、バレー、多目的ホールに卓球、サッカーとドッチは外、といった具合に分かれている。

体育館に近付くにつれて、歓声や声援、ホイッスルやボールが床に跳ねる音、シューズが床を蹴りキュキュと鳴る摩擦音など、とにかく盛り上がっている様子が聞こえて来た。
今どこの学年のクラスがやっているのか分からないので、俺は取り敢えず二階の観覧ができる場所へ移動して、空いているベンチに座った。


うちの高校は男子校らしくスポーツにも力を入れているので無駄に運動系の設備が整ってる。
そうなると全員強制入部させられそうな気がするが、そんなこともない。向き不向きがあることはきちんと考慮されていて、勉強の方で頑張るとハッシー先生に宣言し部活には入らないで済んだ。

ちなみに、俺が意外と真面目に予習をしたりしているのはその為だったりもする。


「さて、律と織田は…と」

階下に広がる暑苦しい程の熱気に、バスケにしなくてよかったーなんてしみじみ思いながら見渡すと、タイミング良く俺たちのクラスーーーつまり、律達の出る試合が始まるところだった。

その途端周りに居た生徒達がわらわらとベンチから離れ、できるだけ前に行こうと手摺りのある場所に集まりだす。


別にどこで見ようと見られるのに、こいつら何してんだ…?なんて、とぼけた事は言わない。


俺は去年身を持って体験したのだ。
本校での律の人気とやらを。


「律くんだー!律くん頑張ってー!」

「律くーーーん!格好いいー!」

「律くん相変わらず素敵だよね…アアー…あの腕に抱かれたい」


はい、出た。律ファンの可愛い系グループ。言わずもがな男子だけどな。抱かれたいと声に出して言える根性が凄い。ある意味尊敬する。

声変わりしてないのか、作ってるのか俺はただそこだけが気になる。


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