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6

一緒に登校しないで、なんて珍しく可愛い嫉妬をしていた律。俺は言われた通り登校したり2人きりで歩かないようには気をつけていたが、そちらにばかり気がいってしまっていたようだ。

飯作ってる、なんて、嫉妬するに決まってるよな。普通。

慌てて律の腕を掴んだ。

「ごめん!また俺…!ぜんぜん気ぃ回ってなかった」

「……なにが?」

「え、ご飯、作るの…嫌かなと思ったんだけど」

「智ちゃんがそうしたいと思ってやってるんでしょ?」


「…………まあ、うん?そうなるのか?」

したい、と言われるとなんか語弊があるような気がするんだが違うとも言い切れない。売り言葉に買い言葉だったような気もするが、華の男子高生が晩飯を食わないなんて言うんだぞ。俺の性格上気になるに決まってる。


「律は…嫌じゃないのか?」

恐る恐る尋ねると、律は腕を掴んでいた俺の手を上から握り、そっと離した。


「…世話焼き」


嫌とは言わずに律は少し拗ねたように呟いて、そのまま俺から離れた。離された手が行き場を失って、中途半端に宙に浮く。

どこへ行くのかと目で追うと、当たり前のように織田の元へと振り返ることなく歩いて行ってしまう。
そして律が現れたことに一瞬驚いた織田の横に並び、さり気なく持っていたカゴを取り上げる。

ああいうところがモテるんだろうな…と遠目に見て思った。


あっという間に離れて行った律にほんのちょっぴり寂しさを感じたが、気持ちの大半はホッとしていた。

ご飯作るなんてヒドイ!俺の恋人なのに!智ちゃんなんて知らない!なんて言われたらどうしようかと思った。
というか最近の流れからすると絶対言われると思ったんだか、意外な反応だったな。

長い付き合いだが織田に対しての律の許容範囲がイマイチ分からない。


作ってやるよ?と、律と付き合う前に織田に自分から言った事だ。出来ればこのまま作ってやりたいと思う自分がどこかにいた。


「世話焼き…かー」


もはや認めざるを得ないか。
俺にはおかん属性が備わっている、と。



「って、いや魚買いすぎだから!そんな買わねーよ!?冷蔵庫の大きさ考えろよ!せめて3種類にして!」

「律のとこは入らないのか」

「入るよー?玲哉ってば、魚好きなんだね。好きなだけ詰め込んでいいよ〜」

「おい!甘やかすな律!お前だって同室の奴いるだろ。いきなり魚ばっか冷蔵庫に増えてたら軽くホラーだから!しかもそんなたくさん買ったところで鮮度もたねーし、晩飯が魚ばっかとか俺ぜってーやだわ」


「……チッ」


「舌打ち……!!!」

マジで俺なんでこんなやつにおかん属性発揮させてんだろ。なんか悔しい。


俺の存在など忘れているかのようにラブラブで買い物をしている2人の元へ豆腐を持って歩み寄ると、律の持つカゴにこれでもかというくらい魚が詰め込まれていた。

こいつは加減てものを知らないんだろうか。


舌打ちをする織田にイラッとしながら、俺はどんどんカゴの中の魚を戻して行く。

「律も見てたんなら途中で止めろよ」

「えー、だって玲哉のあんなウキウキした顔初めて見たんだもん」

「だもん、じゃねーし。つか、どんな顔してたの?お前」

「知らねえ」


律の横でムスッとしている織田が、こちらも見ずに答えた。


「…そんな怒んなって…。ほら、あとは買うから」

「智ちゃんだって、甘いじゃん」

「………」


いつもより数段多い魚の量に、小さい子供の相手をする母親の気分とはこういう感じなのかも知れないと思った。


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