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5

放課後、俺は未だにほとんど顔と名前の一致しないクラスメイト達を前に、今期最大の大役を務め上げたいた。


「じゃあ、バレーはこれで終わりです。次、バスケやりたい人お願いしまーす」


バスケは人気のようでバレーよりも多くの手が上がり、俺は手が上がった生徒の名前を順番にチョークで黒板に書いて行く。

これが俺の2年になって初の大役。クラス委員長としての初めての仕事なわけだがなかなかに大変だ。
やはりクラスメイトの顔と名前は一致させとかないといけないと身を持って感じる。


ところでさ、これ誰か書記とかしてくんないの?普通いるんじゃねーの?司会進行とメモ係みたいな。ねぇなんで俺1人でやってんの。

と、今更困惑してみたところでもう遅い。
ハッシー先生がくれた席順の紙と見比べながら何とか全員分書き終えた。紙を見なくても分かる律は予想通り今年もバスケだ。ついでに織田も。さらについでに言えば石田くんも。

…石田くんの情報は別にいいか。


「ありがとうございます。じゃあ次は…」

その後順調に振り分けが進んで、俺はしれっとドッチボールに名前を書いておいた。人数が基準より少なかったのもあるが、最初に当たってしまえば後は楽できると踏んだ安易な考えのもとだ。

人数が偏ったら面倒臭いなーと思っていたが、結構バランスよく分かれている。

チラリとハッシー先生を見ると欠伸をしていた。



ハッシーめ…!

ーーーもうこれでいいよな。
人数多いとこは当日勝手に話し合ってくれるだろう。多分。そう願う。


「先生。終わりました」

「お、やっと終わったか。おつかれー。後で種目順に名前まとめて俺に提出してくれな。席戻っていいぞ」


心ここに在らずだったハッシー先生が、俺の言葉にやっと現実に戻って来たように立ち上がった。同時に俺もそそくさと自分の席に戻る。

律がキョトン顔で俺を見てきたので、小さな声で、なんだよ、と尋ねる。


「智ちゃんなんでドッチ?バスケは?」

「バスケは去年で懲りた。俺にはバスケは向いてない」

「なんでー?俺がいるから大丈夫だよ」

「そういう問題ではなくてだな…今年はなるべくお荷物にならない種目で頑張ろうかと」

「えーーーーー」

「別にいいだろ!バスケには織田が居るんだから」

「そりゃそうだけどー」

「そりゃそうなのかよ。ちょっとは否定しろって」

「気持ちに嘘はつけない」

「…くっ、知ってるよ!お前はそういう奴だ!」


「はい、そこうるさーい。静かにー」


「あ、すんません」

「はーい」


いつもは喋っていても注意なんてしてこないハッシー先生だったのに、ビシッとファイルでこちらを指してきて驚いた。

これはあれか。
織田と付き合ってる律に対しての小さな嫌がらせか。


なんて心の狭い男なんだ、と思うのと同時に俺、巻き込まれただけじゃね?とウンザリした。



ハッシー先生の終了の合図とともにホームルームが終わり、さっさと部屋に帰ろうとカバンに手をかける。

隣では同じように部活に行くために立ち上がっていた律と、ぱっと目が合った。

そういえば。


「あ、律」

「ん?」

「あのさ、今日朝電話で何か言いかけたよな?あれなんだったんだ」


「…なんか言いかけたっけ?覚えてなーい」


律は首を傾げてにこりと笑う。

「言いかけたよ。なんでもないって言ったじゃん」

「ん〜、分かんない。まあでも覚えてないくらいだから、大したことじゃないでしょ。気にしない気にしない」


本当に覚えてないのか言いたくないのか律は笑顔のまま俺の頭を撫でた。

うおおやめろ!いくら自分の背の方が高いからって同い年の男の頭を撫でるんじゃない!と、言ってやりたいところだが、律に撫でられるのが実はそんなに嫌いじゃない俺なのでここは、まあ、仕方ない。我慢してやる。


「行かないのか、律」


「んぉっ…!?」


そこに突然後ろからカバンを肩に掛けた織田が現れた。
気配を感じなくてビックリして変な声が出るのと同時に後退ると、律の手が自然と離れる。

「行く行く。んじゃあねえ、智ちゃん」

俺の頭から離した手をヒラヒラと振って、織田と教室を出て行ってしまった。

しかしすぐに織田だけ戻って来て、俺の前で立ち止まる。顔は笑いもせず、無表情のままだ。
何だか機嫌の悪そうな気もするが…もしや、朝のことを今言うつもりか!?


「ど、どーした」

「今日、晩飯いらないから」

「…あ、そーなの?了解」


それだけ言うと織田はさっさと行ってしまった。
なんだそっちか。身構えて損した。律とでも食べてくるのかね。


やっぱあいつ態度は悪いけど律儀な奴だわ。


そんな織田に、少しだけ見直した俺だった。


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