2 「お前さ、その寝起きの悪さ昔からなの?」 朝は時間がないのでパン食と決めている今日の朝はツナとキノコを乗せたチーズトーストだ。ネットでお世話になってるレシピサイトから知ったのだが、めちゃくちゃ美味しい。しかもこれ超簡単。これからもお世話になりますレシピサイト様。 「…そんなに悪く無いだろ」 「それ真面目に言ってんなら、マジでヤバイと思う」 今日もパンツ一丁でソファーに腰掛けて俺の作った朝飯をモグモグしながら、織田がジロリと睨んできた。 こいつ寒くなったらどういう格好をするつもりなんだろう。 「今日の朝も律から何回も電話掛かってきてたのに全然出ねーし、挙句の果てに俺に渡してきたんだぞ」 「……記憶にない」 「は!?マジで!?」 「律なんて?」 織田の口から、律、と出るのがまだ慣れない。新鮮な感じだ。ちなみに俺は殴られた朝のことを除けば、未だにアンタとしか呼ばれたことがない。 「…朝練行くって言ったのに来ないからわざわざ電話してきてくれたんだろ。朝練のくだりも覚えてないのか」 「……」 黙るということはそういうことか… こんなに寝起きが最悪なやつ初めて見たよ。 「あと!お前の携帯の音量デカすぎ!うるさくて俺まで起きたじゃん!」 自分の起きる時間でもないのに起こされて、全然すっきりしない。しかも、あそこまで音が大きいと朝からビックリして心臓に悪いったらありゃしない。 忘れないうちに言っておこうと口に出したが、さすがに色々言いすぎたのか織田がキレた。 「あ″ー!もううるさい!朝からグチグチ言うな!」 「うるさい!?うるさいのはお前の携帯だろ!今!ここで!音量を下げろ!」 「………うっぜ」 おおおおい!聞こえたぞ! いましっかり暴言吐いたの聞いたからな! と、あまり言うと手を出されかねないので心の中で言い返す。 分かりやすく機嫌が悪くなった織田だが、片手でトーストを食べながらもう片方の手で携帯を触り出した。 そのあと何も言わずポイっと携帯をソファーに投げる。 「………音量さげた?」 「さ、げ、ま、し、た」 「く、くそー…いちいち腹立つな」 「それはこっちの台詞だ」 「まあいいや。ありがと」 なんだかんだ言いつつ言うことを聞いてくれたみたいなので、素直にお礼を言うと織田はジト…と目を細めてこちらを見てきた。なんだよ。 何か言いたいことでもあるのかと見返したが、織田はプイッと顔を背けてしまった。 い、意味がわからん… でもきっと今は暴言しか吐かれない気がするので、こっちから聞くのはやめておこうと俺も織田から目を逸らした。 奴の音量を下げさせることに無事成功し、これでようやく明日からは平穏な朝が迎えられるとホクホクしながらトーストを食べ終えた俺だったが、問題はその後だった。 もどる | すすむ | 目次へもどる | |