×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

4

その日一日宣言通りに、意識して織田と2人にならないようにしてみたが、そもそも学校にいる間は3人で過ごす時間が多く(俺がボッチになるから)、なんてことはなかった。

織田も俺と歩きたいわけではなく、俺の悪口を聞きたいだけだから律がいるときは俺の側になんて近寄って来ない。もちろん俺だってわざわざ織田と比較されながら歩きたくないし、むしろ遠慮したいので丁度良かった。


そんな訳で、特に何事もなく1日の授業が終わると、律は織田とともに部活に行ってしまった。昨日言っていた通り入部届けを出しに行くらしい。

あいつがバスケ部に入るなんて意外だよな。部活で汗を流す天使なんて、さぞ美しかろう。


…いや、間違えた。あんな口より先に手が出るような暴力的でかつ、口の悪いやつが天使なわけない。あんな天使いてたまるか!


「……帰ろ」

1人になった俺はカバンを持って教室を後にした。



「ただいまー、…て誰もいないけど」

1人虚しいことを呟いた俺が、部屋に戻ってまずしたことは、掃除だ。

織田が来てからバタバタしていて部屋の掃除ができていなかった。部屋着に着替え、腕を捲って窓を開ける。
部屋に備え付けのスマートなコードレス掃除機を手に取りスイッチをオンにした。

広い部屋ではないのであっという間に掃除機をかけ終わり、ついでにベランダに出て外に落ちているゴミも吸った。
そのあと軽く拭き掃除もして、俺は風呂場に向かう。

乳白色のバスタブを洗剤をかけスポンジで磨きながら、そういえば…とある事を思い出した。


「カナコちゃん…居ねえな…」


きょろきょろと辺りを見渡すが、やはり黄色い塊は既に風呂場には無かった。
昨日シャワーを浴びた時も確かもう無かった筈だ。置き去りにされて居たのは1日だけだったのか。

あれから織田の入浴シーンをのぞいていないし(語弊あり)、風呂場に行く姿をわざわざジッと見たりしていないから、カナコちゃんを連れて入浴しているのかは謎だった。

でも多分、仲良く入浴している気がする。


なにせ可愛いものなんて身に付けず、どちらかというとヒョウ柄パンツを履いちゃうようなワイルドで男らしい織田だ。そんな奴があんなキュートで名前まで付けたおもちゃのアヒルを持っているなんて…きっと相当大事なものに違いない。結構年季が入っているようにも見えたし。


「とも、ってアレなんだっただろ。俺なわけないと思うけど、なーんか引っかかるんだよな…」


どうやら俺のことを知っている口振りの織田。
その織田が持っていた【とも】と書かれたおもちゃのアヒル。

もし、仮にあれが俺のことだったとしたら………?


「…いやいやいや、ありえない。そもそもホントに俺知らねえし。ていうか織田の思い違いって可能性の方が高いよな」


良くも悪くも普通な人を極めてる俺だ。
俺みたいなやつ多分どこにでもいると思う。思い違いである可能性の方が確率的には高い。

そうなるとどうやって織田の勘違いを正せばいいんだろう。

俺はバスタブを磨きながら、うーんうーんとそれから30分近く頭を悩ませていたが、結局有効そうな手は思い付かなかった。



「よし!」

カレンダーの今日の日付のところに、自分の名前を書いてグルリとマルをした。
今日は俺が掃除しましたよ、という印だ。
俺はこの部屋の家政婦でもなんでもないので、次は織田にやらせる。カレンダーのことも帰ってきたら教えてやらねば。

「いや〜、いい感じ。スッキリした〜」

部屋を見渡すと整理整頓が行き届いて床も心なしかピカピカと輝いて見える。
1年のときに同室だったやつの1人が毎日掃除を徹底的にやらないと気が済まないような神経質な奴だったから、俺の掃除スキルはその1年でだいぶ向上した。

春休み、久しぶりに自宅に帰省したときなんか、俺の掃除の完璧ぶりに母親が感嘆の声を上げたほどだ。


織田も本人の荷物が少ないというのもあるが、散らかしたりしないし使ったら元に戻すという習慣が出来ているので掃除をするのも楽でいい。
細かいことを言えばゴミの分別もちゃんとするし、トイレのフタも必ず閉めるので、同居人としては最高だ。

あとは俺を毛嫌いせず、普通に接しさえしてくれればなんの不満もないのだが。


「…そこだけなんだよな〜〜〜」


むしろ、そこが一番の問題というか。

でも初日よりはだいぶマシになったと思う。
好かれてはないと思うが、話し掛けても無視しなくなったし飯も一緒に食べてるし険悪というほどでもない。

あ、飯といえば今日夜なに作ろ。
昨日が洋食だったから今日は和食とかかな。


俺は冷蔵庫の中にストックしている食材を見ながら、のんびり何を作るか考えることにした。


もどる | すすむ
| 目次へもどる |