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翌朝、さすがに今日は律も朝練に行ったのか部屋には来なかった。


俺が部屋を出ようと玄関でゴソゴソしていると、後ろから織田がカバンを持ってやってきた。後ろに立つと壁にもたれかかってこちらを見下ろす。


「早くしろよ」

「待てって。今履くから、…よし!」


急かす織田に何とか靴を履き終えた俺は廊下に出る。直ぐに後ろから織田も出てきた。今日は織田が鍵を閉めてくれるようなので、俺は先に行くことにして歩き出すと何故か隣に織田が並んだ。

今日は殴られる事なく起きてくれたと思ったのに、一体どうしたんだ?もしかして寝惚けてるのか?これじゃまるで一緒に登校するみたいなんだが…


「なに?」

「え、いや。もしかして一緒に行く感じ?」

「イヤなの」

「俺が嫌とかじゃなくて…嫌なのはお前だろ」

「気が変わった」

今日もなんだかんだ言って朝飯を作ってしまったんだが、やっぱ朝飯効果…?情緒不安定かってくらい織田の気持ちがコロコロ変わってイマイチついて行けない。

まあ、嫌われるよりは全然マシなので構わないが…いいのだろうか。
一応もう律の恋人ということになるが、俺と2人で登校なんてして。


「まあ…いいか」

一応同室だし、クラスメイトだし。

自分の考えに納得して、織田との登校を受け入れたが、これがそもそもの間違いだった。



「うわ、あの噂本当だったんだ」

「あいつ、別にめちゃくちゃ顔がいいわけでもないのにどうやって取り入ってんだ?」

「ああいう組み合わせの場合はどっちがネコになるの?」

「俺、転入生の方でしか勃たねえ」

「そんなん俺もだわ。じゃあ、あの普通の方が突っ込むってこと?あんなやつが相手できんの?信じらんねぇ…羨まし過ぎるだろ…」

「浅倉とデキてるなら納得できっけど…あいつか…」

「昨日もすげえ仲良く歩いてたし、手ぇ出すの早えよな」

「なんか弱味握ってるとか?」

「ウッソ、こえ〜!」



…こえ〜のは俺の方だよ。

俺は織田の隣を歩きながら聞こえてくる会話に、耳を塞ぎたくなる気持ちに襲われていた。

昨日の放課後、織田に校内案内をしていたのを見た人達に何を勘違いされたのか、デキてると誤解が生まれ周りから敵対心を剥き出しにされている。

だから距離が近いと言ったのに!

昨日よりもヒートアップしている暴言の数々に俺もノックダウン寸前だ。あんなやつとか地味に傷付く。…俺は美人の横で息をしてるだけで罪なのか。


「………ハア」

「辛気臭くなるから溜息つくな。鬱陶しい」


でも知ってるか?お前ら。
こいつがいいのは顔だけで、とんでもなく性格もキツイし口も悪いし悪魔みたいなやつなんだぞ?俺限定でな!


「ごめん。でもお前いいの…?俺とデキてることになってるぞ…」

「なってるな。しかもアンタが俺に突っ込むって?無様過ぎて笑える」

「おい、やめろ…ただでさえ、今メンタル弱ってんだ…追い討ちをかけてくるじゃねえよ…」

そんな顔で突っ込むとか言うな!なんてツッコミを入れる元気も出ない。
ゲッソリしている俺とは正反対に織田はなんだかご機嫌だ。俺とのことを噂されてご立腹かと思ってたのに、何がそんなに楽しいのか。


「アンタすごい言われようだな。やっぱ俺の持論は正しい」


「………」

それはあれか。見た目8割のやつか。
隣で口笛でも吹き出しそうなくらい機嫌の良い織田に苛立ちを感じた。

こいつはどうやら、俺が悪口言われまくってるのが楽しいらしい。ほんとに性根が腐ってる。


「お前な…仮にも自分の恋人の友達が悪口言われてんだから少しは心配したらどうなんだよ」

「は?恋人の友達とかただの他人だろ。何の関係もないし」

「…まあ…そりゃ、そうなんだけどさあ…」


冷たい奴め。

「とりあえず、もう少し離れて歩いてくれねえかな?」

「ほんとアンタって自意識過剰だな。面倒臭ぇ」

「だって!俺が距離あけても詰めてくるじゃん!?お前の距離感がどう考えてもおかしい!物理的な距離が測れないやつかお前は!」

「俺は誰と歩いててもこの距離だっつーの!つか、うぜえから騒ぐな」

「〜〜〜腹立つ!!」

周りから、なんだ?痴話喧嘩か?いいぞ、そのまま別れろと聞こえてくる。ほんとに付き合ってんだったら別れてえよ!こんな可愛くないやつ!!

「んも〜…律の耳に入ったらどうすんだよ……」

よもや2人が付き合いだした次の日から、こんな噂が立つとは思わなかった。
律のことだからきっと信じないとは思うが、周りであんなこと言われたら気分は良くはないはず

実際付き合ってるのは律と織田なのだから、時間が経てば誤解だったと周りも気付くだろう。
しかし、それまでが面倒臭そうで俺はまた溜息を吐いてしまう。

案の定、隣を歩く織田にジロリと睨まれた。

溜息くらい吐かせてくれよ。
元はと言えばお前が紛らわしい距離で歩くからなんだぞ…?


心の中で責任転嫁をしてみたものの、噂が立ってしまったものはもう遅い。
早く誤解が解けますように…と願うしかなかった。


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