×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

5

「ここが、保健室だよ。基本的に先生が常駐してるから」

「ふーん。保健の先生も男?」

「当たり前だろ。こんな男の巣窟に女の先生なんて居たら大変なことになるわ」

「つまんねえな」

「…織田は女が好きな人?」

「顔が良ければどちらでも」

「………」


こいつ多分律と話が合うやつだ。
バイ?って言ってたか、確か。でもここまで美人な男と釣り合う女なんて居ないだろうな。俺が女だったら自分より綺麗な男となんて並びたくない。


同性の俺でさえ嫌なのに!


「てゆか、お前さっきからなんか近くね!?」

「は?自意識過剰も大概にしろよ」

「すんません」

織田の横に並んで歩いたのが初めてだから、こいつの距離感がよく分からない。律と並んでたときもこんな近かっただろうか。意識しないと手がぶつかる距離だ。


「で、次は?もう終わり?」

「あとは体育館でバスケ部とバレー部がやってる…けど、体育館は昨日行ったし分かるよな」

「部活の様子が見たい」

「マジ?なんかお前アクティブだな」

ジロリと睨まれて、俺は慌てて体育館に歩き出した。


途中律の好きそうな可愛い系の男子グループにすれ違った。もしかしたら律の元カレが居たかもしれない。だけど問題はそこじゃない。

すれ違ったあとに聞こえてくるヒソヒソ話だ。


「あれ?さっきの律クンといっつも一緒にいるやつじゃない?」

「ホントだ。っあ!隣にいるの昨日転入してきたっていう超美人の人だよ!」

「なんなの、あいつ。なんであいつばっかりあんな人たちと一緒に行動できるわけ?」

「釣り合ってないんだよ。鏡見ろよ」


「………」

とまあ、さっきからこんな具合に悪口ばっかり言われてるんだよ!


もー!こいつ連れて歩くのほんとやだ!色んな人に注目されるわ、嫉妬されるわ、悪口言われるわで俺のメンタル結構ボロボロよ!

律の場合は、親友なんだから一緒に居て当たり前だろ!文句言ってくんな!ウゼェな!となんとか思えるが、織田の場合は別に俺が好き好んで一緒に居るわけではないので理不尽の一言に尽きる。



早く終わらせて部屋に戻りたい…
まあ戻っても織田が居るのであまり心が休まる気がしないが…


そうこうしているうちに体育館に着いた。
中からボールが跳ねる音、シューズが地面をキュキュッと蹴る音、ホイッスルの笛の音…運動部ならではの音がたくさん聞こえてくる。

「バスケ部興味あんの?」

「あるっちゃあるし、ないっちゃない」

「どっちだよ」

訳のわからない返答に首を傾げながらも、体育館の扉から中を覗く。
ちょうど試合の練習をしていたようで律が颯爽と掛けていた。相変わらずリーチの長さを生かした動きに嫉妬を通り越して尊敬の念を覚える。


「浅倉ってホント、アンタと不釣り合いだな」


織田も律を見ていたのかすぐ真横でそんな声が聞こえた。いや、だから近いって!!と思うのだがまた言うと自意識過剰だなんだかんだと言い返されかねないので我慢したが、織田のセリフには少なからずカチンときた。

「うるせー。人間、顔じゃねーんだよ」

「人間、顔だろ。見た目8割」

「残り2割あるじゃねえか」

「2割は金」

「………最低かよ…」

織田の最低発言に引いた。こんなにも美しく気高く儚い容姿なのに、こいつの心は腐ってる。



「つかアンタらってなに?デキてんの?」

「んなわけねーじゃん!あいつはそれこそお前と同じ可愛いやつにしか興味ないよ。俺とあいつは…その…親友だ」

親友というセリフを他人に言うのはなんだか少し恥ずかしいな。むず痒い感じがする。


「親友……ねえ」


織田が含みのある言い方で呟いて、律から目を離して俺を見た。
俺より織田の方が若干背が高い。若干な!
それになんだよ、という意を込めて見返す。

やはり近い。

近いからこそ織田の肌のキメ細かさがよく分かった。律も綺麗な肌をしているが、織田のはまた違った、まるで陶器で作った作り物のようなさらさらな肌だ。

つい触れてしまいたくなるような肌。

その頬の上にある薄い色素の目はただ真っ直ぐに俺を見つめていた。



「な……いや、ほんとなんだよ。言いたいことがあるなら言えよ」


思わず逸らしそうになったが、逸らしたら負けな気がして俺も目を合わせたまま強めに言う。

ふいに頬に手が触れた。

俺なんかに触れてくるやつなんて律くらいなものだろうと思っていたが目の前にいるのは織田だ。
正直あり得ないと思ったのだが、織田が俺の頬に触れ親指が口端に触れてきていた。

少し触れただけだが、できたての青アザはチクリと痛む。

「……い、て」

そういえば朝も律にそうやって触られたな。



待てよ…その流れで行くと、俺また青アザ押されるやつじゃね!?やだやだ!もう無理!絶対嫌だ!

しかしここでまた朝のように騒ぐと、フリだとか訳のわからないことを言われ痛い思いをしそうで上手く言葉が出てこない。

色々考えていると先に織田が口を開いた。


「これ、ほんとに俺がやったのか?」


「…お、おう。お前だよ。ほんとなんにも覚えてないんだな」

「似合ってるじゃん」

「……………嫌味か?」

「ああ」

フッと笑われて、力任せに織田の手を振り払おうとした時。

「智ちゃん!玲哉!」

体育館の中から律の呼ぶ声が聞こえた。
試合の練習に一区切りついたのか、バスケ部員がそれぞれ水分補給をしにバラバラに散る中、律だけが俺たちの元に走ってくる。

同時に織田の手も離れた。

ホッ…


「どーしたのー?2人で来るなんて。なんかあった?」


キラキラ光る汗を滴らせながら、律が爽やかな笑顔を向けて来る。汗をかいているというのに、嫌な臭いは一つもして来なかった。

「よ!律。なんかあったっていうか、ハッシー先生が、織田に校内の案内してやれって。部活してるとこ見たいって言うから連れてきた」

「え!?玲哉が俺を見たいって!?」

「いや、そこまで言ってないけど…」

「そうだ、浅倉。お前を見にきた」

「え!?」


まさかの織田のデレ発動。
なんで!一体なにがあった。


もどる | すすむ
| 目次へもどる |