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6

「あー!腹減ったー!」

授業が終わった瞬間両腕で伸びをした佳威は、勢いよくこちらを向いて叫ぶ。

「飯食うぞ!飯だ!飯!」

「お、おう!俺も腹減った。え、てか2人とも何?弁当?」

「んなわけねえだろ!俺は学食派!」

ケーイチはともかく佳威はお弁当という感じでもないな、と思っていたらやはりそう答えた。ケーイチは?と振り向くと、俺も今日は学食なんだ、と微笑む。

「説明あったかもだけど、この学校には学食と売店があるから、好きなもの食べられるよ」

「あ〜、そういえば先生が言ってたような…でも助かった。俺も弁当持ってきてないんだよね」

今にも鳴りそうな腹を抑えてそう答えると、グイッと腕を引っ張られて腰が浮く。

「んだよ、みんな学食か!んじゃとっとと行こうぜ!ほれほれ」

「うわああ、ちょ、待っ」

強引に引っ張られる形でそのまま佳威の後をついていく。どんだけ腹減ってんだよ、こいつ!つーか歩きにくい!

助けを求めるように振り向くと後ろから慌ててケーイチが追ってくるのが見えた。

「ちょっと、佳威!睦人困ってるから!そんな急がなくたって混んでないだろ」

「んなこたどうでもいいんだよ!ただ俺の腹がもう我慢できない走れって騒いで…」

「どんな腹だよ!自己主張激しいな!」

思わずツッコむと佳威の動きが一瞬止まってパッと手を離される。思わずよろけそうになったところを今度はガバッと長い腕が俺の肩をしっかり掴んだ。ふわっと良い匂いがする。香水でもつけてんのかな。

「いいねいいねー!睦人その調子で今後もよろしく頼むぜ!」

なにがツボを得たのか不明だが佳威はとても楽しそうに笑った。
やっと横に並んだケーイチが呆れたように溜息をつく。

「睦人のこと気に入りすぎでしょ。分かりやすいんだから」

「え」

俺、気に入られてるの?それは友達として嬉しいけど。

「なんだよケーイチ、ヤキモチか?大丈夫大丈夫。俺はお前のことも気に入ってっから」

「そりゃどうも」

「ケーイチ目がすわってる…」

「気にしないで!睦人。こいつずっとこの調子だから」

「に、賑やかで楽しいじゃん。な!」

佳威の相手は疲れました、とでも言わんばかりのケーイチになんとか場を和ませようと言葉を探す。

「俺、好きだよ!こうやってみんなでわいわいするの」

「だよなー!やっぱ睦人とは気が合いそうだわ……てか、なんか睦人すっごいいい匂いすんな」

満足気に笑いながらさらに肩をぎゅーと抱かれた時だった。佳威の顔が首筋付近に近付いて、まるで犬みたいにクンクンと匂いを嗅ぐ。

「香水でもつけてんのか?」

「え、いや、何もつけてないしつけてるのは佳威じゃ、…て、ちょっ、と、くすぐったい!」

顔周りに佳威の髪の毛が当たって痒い。助けてくれ!とケーイチを見ると興味津々といった顔でこちらを見ていた。

「いい匂いするの?ちょっと俺も…」

「ぎゃあああお前らやめろーーー!!」

両側から匂いを嗅がれて悲鳴が出た。
男が男の体臭嗅ぐってどんな罰ゲームだよ!

「んー…?いい匂いって柔軟剤っぽい匂いのこと?睦人柔軟剤何使ってるの?」

「え…柔軟剤の銘柄までは知らないけど…なんだ、服の匂いか」

「いや、服の匂いじゃねえよ。柔軟剤っつか…なんだろすごい甘い匂い…?」

そう言われた瞬間に喉がヒクッと痙攣したのが分かった。俺は慌てて2人の間から飛び出す。

「だー!もうお前らやめろよ!俺の匂い嗅いでないでさっさと飯食おうぜ!佳威は腹減りすぎ」

「ごめんごめん。佳威が変なこと言うからつい…早く行こう」

「んだよ、だってすげえいい匂いしたんだもん。まあ、いいや!あー、腹減った」

最初腑に落ちないようだったが佳威はすぐにご飯の方に意識が向いたみたいで、足取り軽く歩き出した。




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