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「じゃあ、俺も睦人って読んでいいか?」


ケーイチからの名前呼びに喜びを感じていたら突然、横の席で机の中をガサガサしていた男子が声をかけてきた。

「も、もちろん良いけど、えっと…?」

「おし!よろしくな睦人!俺の名前は光田 佳威だ!わかんないことがあったら何でもケーイチに聞けよ」

「なんで俺だけなんだよ」

よろしくなと言いながら肩をバンバン叩いてくる。誰にでも好かれそうな笑顔だ。

というか、こいつめちゃくちゃ爽やかで格好良い。暗めのアッシュで染めたであろう短髪をワックスか何かで無造作に遊ばせていて、清潔感とエネルギーに溢れるようなヤツだ。
笑顔が爽やかだから緩和されているが、顔が整っているのもあってどちらかというと強面で迫力がある。なにより、背が高い。出来れば並ばれたくない。

「よろしく、佳威。て、呼んで良いんだよな?」

「当たり前だろ!むしろ光田くんなんて呼ぶんじゃねえぞ」

「お、おう」

「ちなみにもうハナから言っちゃうけどこいつ一応光田組のボスの息子なんだ」

「こっ…光田組!?」

光田組って俺でさえ聞いたことがあるようなあの、ヤ…ヤのつくお仕事の人達だろ!?

え、マジか!?

「バラすの早えな」

「あとから知って衝撃受けるより最初から知っといた方がいいでしょ」

「まあ、次男だからなんの関係もねえからいいけど」

あっけらかんと答える佳威に、いや関係無くはないだろ、とケーイチが苦笑いする。


「関係ねーよ。あそこは兄貴が継ぐって決まってんだし、俺は自由に生きるね」


一般家庭に生まれた俺からしたら話の内容はなかなかにディープなのに、佳威は当たり前のように爽やかに笑った。

そんな笑顔を目の当たりにして俺は胸がギュッと締め付けられる。


「…格好良いな。俺もそんな風に…」


「え?」

ぽろ、と出た言葉。
ハッと気付いて続く言葉を飲み込んだ。

「なんでもない!ところで、一限目って現国であってたっけ?」

最初不思議そうな顔をしていたケーイチと佳威だったが、すぐに話に乗ってきてくれた。

「そうだよ。睦人は教科書とかもう持ってるの?」

「全部じゃないけど、とりあえずはほとんどある!」

「じゃあ大丈夫だな。まあ持ってなかったら俺の見せてやるから言えよな」

隣の席だし、と佳威が笑う。それにありがとうと答えたところで予鈴が鳴った。


―――俺もそんな風に、生きてみたい。
飲み込んだ言葉は腹の奥深くにズンと重く響いた気がした。




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