×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

8


この感じ。

これはもしや…というか、多分。


「…やば…風邪ひいたかも……」


昔より体力がついてきたとはいえ、小さい頃は季節ごとに風邪をひいていた俺だ。今でも、わりと簡単に風邪をひく。

転校してから一度も引いてはいなかったが、今になって疲れがでてきたのかもしれない。


そういえばここ最近色々あったしな。



「………ぃ……」


そんなことを若干ぼんやりしてきた頭で考えていると、コテージの真横にあった小屋から誰かの声が聞こえた。

確かここは食器だとか薪とかが置いてある用具入れみたいなとこだったはずだ。
俺の記憶が正しければ、片付けを終えた食器を山下くんたちがここに仕舞いに行ってくれていたと思う。


もう片付けの時間がだいぶ過ぎたので、誰かいるとも思えなかったが、確かに誰かの声が聞こえて俺は興味を引かれてしまった。


用具入れに近寄ると、その声は確かにこの中から聞こえているようで、話し声というよりはくぐもった少し苦しそうな声。



「………ンっ、ああっ…」



ーーーま、まさか……。



なんとなく、想像がついてしまったが、こんなところで誰が楽しんでいるんだ、と体調が悪い俺は理不尽な苛立ちを覚えた。

良くないとは思いつつも、風通しの為か少しだけ開かれた窓からそっと中を覗く。


「あっ、イイ…!気持ちいぃ、よお…ゆ、うきくん…っ」

「うん、俺も気持ちいいよユキちゃん」



……………んん?


あの派手な髪色と見覚えのある後ろ姿は…



何度か目をパチパチと瞬きをする。


「………?」


窓から覗いた薄暗い室内には、机の上でうちの高校の体操服を着た男女が淫らに身を寄せていた。

女の子は男の背中であまりよく見えないが、男の体に開かれた白い足が艶かしくハッキリ見える。


男の方は服を脱ぐことなく、多分ズボンを少しずらして前だけ出しているんだと思うが、何度瞬きしてもその姿はーーー


有紀にしか見えなかった。


それにユキちゃんといえば、有紀と用事があると2人でどこかに行っていた子の筈だ。



「あ…ァ……だめ、有紀くん…おかしくなっちゃう…!」

「いいよ?俺結構スキだよ、そういうの」

「ほんとっ…?じゃあ、じゃああたしと付き合ってく、れる…っ?」

腰の動きに合わせて、ユキちゃんの息がつまる。それでも、なんとか最後まで言い切った台詞に耳を疑った。


付き合ってくれる?て…

まだ付き合ってないってこと?
そんな関係でこいつら何やってるんだ。


そんなユキちゃんの言葉に有紀は打ち付けていた腰をピタリと止めた。


「…そういうこと言うの?そんな面倒臭いこと言うなら俺やめちゃうよ?いいの?」

「や、やだ…!やめないで…!!」

「じゃあ二度とそういうこと言わないでね?分かった?」

「ごめ、んなさい…」

「イイコー」



そこまで聞いて俺は音を立てないように急いでその場から離れた。


見てはいけなかった。

というか、あまり見たくなかったかもしれない。



先ほどよりも熱く感じる体に、ヨロヨロしながら俺はトイレに駆け込んだ。
洗面台に両手をつき、早まる鼓動を落ち着かせるために深呼吸をする。
鏡に映る自分を見ると、やはり熱があるのか頬が赤く風邪特有の潤んだ目をしていた。


「はぁ…」


チャラいチャラいとは思っていたが、あそこまで軽いやつだとは思わなかった。

女の子の好意に対して面倒臭いと言ったのだ。そんなことってあるか。

最低野郎じゃないか。


俺へのちょっかいも、好きだなんだと言ってはくるが実際のところ男性Ωという興味心だけで行なっているのかも知れない。

そう思うと少し胸が痛んだ。



「って、別にどうでもいいし。てか……ほんと、あちぃ…。インフルかな…」


インフルにはまだかかったことはなかったが、明らかに高くなった体温に息を吐く。目の奥がズゥンと重く感じ、下半身もダルい。


だけど少しムズムズする感覚に、ギョッとした。




「……ちょ、俺………マジか………」



意味がわからないが、いつの間にか下半身が元気になっていた。


嘘だろ、あり得ない。


否定をしたいのに、現実に服の上からでも分かる程に股間が上を向いていて、否定のしようが無かった。もしかしたら先ほどの有紀達のエロい行為に感化されてしまったのかもしれない。

最低野郎だと貶しておいてしっかり勃起している自分こそが一番最低なんじゃないかと項垂れていると、心臓が力強くドクンと脈打った。


「うっ…」

思わずその場で座り込み、揺らぐ視界の中トイレの床を見つめる。


そうしているとタイミング悪く、外から土を踏み締める足音が聞こえてきて、俺は慌てて個室に逃げようと脚に力を入れた。


「っ…」


しかし、足に上手く力が入らない。

こんなところにまで来て1人トイレで元気になっているところを見られるのは非常に不味い。最悪、変態のレッテルを貼られかねない。


しかし、俺の焦る気持ちとは裏腹に足音は思った以上に早く近付いてきてしまい、俺は咄嗟に顔を見られないように俯いた。




もどる | すすむ
| 目次へもどる |