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7

「対して今と変わんねえよ。ただαだらけのガッコだったから、媚びるやつだけじゃなくて敵対視してるやつも居たけど」

「へ〜、あの黒澤くんに敵対心燃やすなんて随分自分に自信がある子たちが居たんだね」

ケーイチの言葉に頷きながら佳威は最後の一個だった餃子を口に入れた。

「しかもあいつのやべえところは、その敵対視してる奴らまでいつの間にか手懐けてんだよな」

何をしたのか気になる反面、あまり想像したくない複雑な気分だ。
桐根学園で渥の性格はねじ曲がってしまったんだろうか。

…ありえる。


「αは色々大変だねえ。βだからそういうのとは無縁だけどさ」

ケーイチがのんびり言う。
それに俺も頷いた。


「面倒くせえだけだよ」


佳威言葉通り心底面倒くさそうに呟いた。

それから残っていた水をグイッと飲み干すと「食ったしそろそろ出るか」と言いながら席を立ったので、俺達も合わせて立ち上がった。



「ただいま〜」

2人と別れたあと家に帰ると、既に父親も母親も帰ってきているようで家の中から楽しそうな笑い声が聞こえた。

親父珍しく早いなー、なんて思いながらリビングにひょこっと顔を出してからギョッとした。


「あっ、あああああ渥ーーー!!?」


「うわ!?びっくりした!…て、なんだりっちゃんか〜!おかえり」

「遅かったじゃない!渥くん待ってくれてたのよ」

もう既にホロ酔い気味の父親は嬉しそうに、キッチンに立っていた母親は俺に非難めいた声を上げた。

そして、父親の前には私服姿の渥が座っていた。

テーブルの上にはいつも以上に豪華な晩御飯が並べられていて、きっと母親が久しぶりの渥にテンションがあがって作ったんだとすぐに分かった。



「た、だい、ま……?」

なんでまた渥が俺の家に…そして何故楽しそうに夕飯を食べているんだ…!?

今日ちょっと渥との遭遇率高すぎじゃない!?

俺があわあわと驚きのあまり口をパクパクさせていると渥が猫のように目を半月に細めて笑った。



「やっぱりビックリしてる。ごめんな睦人、突然来て」

「………は?」


目が点になっている俺に向かって父親が手を振る。

「いやな、今日たまたま駅にえらい男前がいるな〜と思って見てたんだよ。そしたら向こうから手を振ってきてくれるからさ。こんな男前の知り合い居たかな!?て驚いてたら渥くんだったんだよ〜」

お酒も入っているし久しぶりの渥に機嫌もいいのか、赤ら顔で話す父親はいつも以上に饒舌だ。

「他人の子は成長が早いって言うけど、ほんとだよな〜。あの頃はりっちゃんとも対して変わらなかったのに、今じゃ頭一つ分くらい違うんじゃないか?」

「ほんとよね!顔はどうしようもないけど、身長くらいもう少しあれば良かったのにねえ」

「よ、余計なお世話だよ!」

思わず言い返した俺を見て渥が笑う。

「でも、背が高くて得することなんてそんなないですよ。睦人くらいがちょうどいいんじゃないかな」

「もー!謙遜しちゃって!相変わらずいい子ね〜、渥くん。…あっ、そういえば今日プリン買ってきたのよ〜!渥くん好きだったわよね?デザートに食べない?」

「ほんとですか?もちろん食べます。…俺がプリン好きなこと覚えててくれたんですね」

「もちろんよー!はいっ、いっぱい食べてね!新商品とかも出ててたくさん買って来ちゃったの」

「嬉しいな。睦人も食べなよ」

「……お、俺はさっき飯食ってきたから…」

「そうなんだ。残念」

にこにこと昔のような人懐っこい笑みを浮かべる渥は美味しそうにプリンを食べている。

そういや、こいつ昔からプリン好きだったな。

俺はプラスチック容器から皿に返す作業が好きで、渥がプリンを食べるときは必ずひっくり返す担当だった。



とにかく美味そうに食べる渥に全く近付くことができないまま、俺はその様子をリビングの扉から呆然と見つめていた。


目の前に居るのは渥でいいんだよな?

なんか明らかにキャラ違うんだけど。
こんな好青年みたいな奴じゃなかっただろ。

なんて言うのがしっくりくるだろう。

例えば昔の俺の好きだったころの渥がそのまま大きくなったみたいな…そんな感じだ。



正直、脳内は大パニックだ。




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