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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -

5


教室に戻るとやっぱりケーイチは机に弁当を置いたまま先に食べずに待ってくれていた。


椅子にもたれて携帯を弄っている。ああやって無表情で携帯を触っているケーイチを見ると、いつもの穏和な彼とはまた違う雰囲気を感じた。

そんなケーイチは教室に戻ってきた俺たちに気付くとこちらを向いてあの優しい笑顔で「遅い」と笑った。

「あっ、ご、ごめんなケーイチ。途中変なのに絡まれて…」

もはや変なの扱いである。

「変なの?佳威がいるのに絡んでくるやつなんて居たかな…、あ」

机にそれぞれ弁当を置きながら俺たちはやっと腰を降ろした。
ケーイチはすぐに誰か思いついたのか苦い顔をした。

「矢田か…。大丈夫?睦人。なにもされなかった?」

「させるわけねえだろ。あいつまた違うΩ連れて歩いてたぜ」

佳威がさっそく買った弁当を開けた。俺はとりあえず弁当と一緒に買ったお茶でゴクリと喉を潤す。

「また?ほんとそういうの好きだねあの人。…まあでも佳威もあれくらい積極的に番探ししてもいいと思うけど」

「はんなへっほうなしみはいなほとふるわへねーたろ(あんな節操なしみたいなことするけねえだろ)」

「ちょっと佳威。口に物入れながら喋るのやめてくれる?はー…まあ睦人が無事ならそれでいいや。俺らも食べよっか?」

「うん、ケーイチ待っててくれてありがとな」

そうお礼を伝えるとケーイチがにこりと微笑んでくれた。



昼ご飯を食べ終えた俺たちは午後の授業である体育の為に更衣室に移動していた。

「ご飯食べた後が体育とか…もうちょっと考えて欲しいよな…」

俺がぶつぶつ言いながら胃を抑えると、隣で佳威がシャツを脱いでロッカーに入れた。
チラリと目をやると程よく筋肉のついたバランスのいい胸板をしていた。
う…同じ男子学生の体とは思えない…この横で着替えなきゃいけないのか…なんの罰ゲームだこれは。

「そうか?俺は別に食ってすぐ動けるけど。つか眠くならねえ授業の方が楽でいいわ」

「佳威らしいな」

ハハッと笑うと佳威の横で上のTシャツを着終わったケーイチがひょっこりこちらに顔を出した。

「ちなみに俺も睦人と同じ意見だよ」

「あっ、仲間だ!ケーイチならそうだと思った!」

「え…なにそれ。俺そんな風に見られてるの?」

「そりゃそうだろ。お前みたいに貧弱そうなやつが運動得意には見えねえだろ」

「体力バカの佳威に言われたくないな!」

「なんだと?」

「はいそこまでー!二人とも喧嘩は後にして早く着替えちゃおうぜ!」

慌てて止めると二人はしぶしぶ俺の言葉に従ったようだった。
それに一息ついて俺も上のシャツを脱ぐ。


この学校には男女それぞれ更衣室が設けられている。中は広く掃除が行き届いているのか汗や制汗剤など匂いが全くしない上に、快適なエアコン付きだった。
なんなら奥にはシャワーも完備されているらしい。

クーラーのおかげで更衣室の中はひんやり冷たい。肌を露出すると夏だというのにぞわっと寒気を覚えた。
ちょっと温度低く設定しすぎなんじゃないか。

「うっ、寒っ」

「………睦人お前…」

寒さで一瞬震えた俺の体を佳威がまじまじと見つめてきていた。佳威はもうすでに黒のTシャツに身を包んでいる。

この学校のジャージはOBでもある有名なデザイナーがデザインしたらしく黒を基調にネイビーのラインが入ったシンプルで格好いいデザインになっている。

佳威みたいな身長も高く手足がすらっとした人間が着るとほんとに様になる。多分このデザインなら俺が着てもそこそこ見えるようになる、気がする。

そんな事を考えながらTシャツに手を伸ばすと、横から佳威の手が俺の腰をガシッと掴んだ。

「ひゃ…!?」

突然のことに変な声が出る。
佳威は特に気にした様子も無く腰を掴んだまま少々呆れ気味な声でこう言った。

「おっ前…も細いな〜。ケーイチのこと言えねえぐらい貧弱だな」

「うるさいな。俺を比較対象に出さないでよね。…でもほんと睦人腰細いね〜」

そう言ってケーイチまでも近くに寄ってくる。

「いや、待って。なにこの屈辱的な感じ。…俺の成長はこれからなんだよ!今に見てろよ!ムキムキになってお前ら見返してやるから!」

「睦人はこのままでいいだろ。まあもうちょっと食っても良さそうだけどな」

「そうそう、ムキムキな睦人なんて見たくないしね」

「…だからなんでそういう時だけ意見が合うんだよ…てかいい加減離せ!風邪ひく!」

「おっと、わりぃわりぃ。つい」

「佳威はすぐに睦人のこと触るねー、睦人セクハラで訴えていいよ。俺の知り合いに弁護士いるから紹介するよ」

弁護士の知り合いがいる高校生ってどういうことだ。

「仕方ねえだろ。触りたいものは触りたい。多分俺、睦人なら抱けるぞ」

「あ、は、はあ!?」

あまりにストレートな発言に思わず顔が赤くなった。そんな俺をケーイチがバッと佳威から離す。

「離れて睦人!こいつヤバイ!」

「うるせーなー。睦人からいい匂いがすんのが悪い」

「いい匂いって…」

ケーイチがちらりと俺を見る。
俺は少し引き攣った顔をしていたかもしれない。

「バーカ嘘だよ。お前ら本気にしすぎ。つかほんと早く服着ねえと風邪引くぞ」

そう言って佳威が俺のTシャツを投げて寄越す。

「あ、ありがと。てかっ…ほんと俺が風邪引いたら佳威達のせいだからな!」

「えっ!?佳威、達って俺も?俺は睦人のこと守ったのに」


しょんぼり項垂れるケーイチの後ろで俺は急いでTシャツを着た。おろしたてのそれはひんやりと肌を覆った。




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