自己紹介
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「みんなー、今から紹介したい奴がいるから集まってくれ。」

クロロの一声でばらばらだった団員が集まる。バロンはクロロの隣でニコニコと胡散臭い笑顔を振り撒いている。団員達はその笑顔に少し引いた様子だ。

「で、団長。こいつ誰なんだ?」

一見極悪ヤンキーの金髪の男はフィンクス、眉がないのが特徴だ。

「あぁ、それを今から紹介する。」

「なんか怪しいね、拷問していいか?」

「フェイタン、それは止めてほしい。」

眉をひそめてバロンを睨んでいる全身黒に包まれた男はフェイタン、みんなに比べて少し身長は低いが拷問好きなので要注意人物だ。

「とりあえず早く紹介してよ、俺まだ仕事終わってないんだけど?」

ある程度整った顔立ちの金髪碧眼の男はシャルナーク、機械オタクで腹黒い。

「まぁまぁ、そう言うな。一先ず団長の話を聞こう。」

みんなを宥めている体が大きな男はフランクリン、優しい奴だ。

「そうね、団長の話を聞きましょう。」

物分かりの良いグラマーな鼻の高い美人はパクノダ、みんなのお姉さん的存在だ。

「ありがとうございます、マチさん。」

「・・・・・・・は?」

急に礼を言ってきたバロン。一体、何で…

「マチさんが一人一人丁寧に団員の皆さんの紹介をして下さりましたので、名前と顔を早く覚えることが出来ました。」

「「「「「「「はぁっ?!!」」」」」」」

誰もがその言葉を聞いて目を見開いた。人の考えることなんて普通の人間ならば分かるわけがない。ということは、こいつはただ者ではない。自然と身構える。

「あぁ、そうか。なら少し手間が省けたな。」

ただ、団長だけは特に驚いた様子もなかった。唖然とした団員達の前で続ける。

「紹介する、こいつはバロン=クロックワッカー。」

「先程はお騒がせして大変申し訳ありませんでした。」

丁寧にお辞儀をするが、団員達にとってそんなことどうでもいい。バロンの能力についてが気になるのであった。団長、クロロが連れてくる男である。ただ者ではない。果たしてこいつはどんな念を使うのか、どのくらい強いのか。それしか頭になかった。

「で、団長。彼はどんな念が使えるの?」

皆の気持ちを代弁してシャルナークがクロロに訊ねた。

「あぁ、こいつの念能力は…」

クロロがバロンをちらと見る。クロロの視線に気づいたバロンは優しく微笑み、軽く頷いた。団員達は息を飲む。

「こいつの念能力は時を操る念だ。」

「「「「「「時を…操る?!!」」」」」」

全く意味が分からないという表情を皆している。時を操る念能力で一体どうしたら人の考えていることが分かるのだろうか…。
バロンは、そうなりますよね。と苦笑いをし、それから困ったように首を傾げうーん、と呟く。

「実際見せてみたらどうだ?」

クロロが提案する。しかし、バロンは首をふって提案を拒んだ。

「申し訳ありません、クロロ。今はまだ禁じられているんです。」

「そうか、それは残念だな。じゃあ、とりあえず何か言っておけ。」

それで良いのか?クロロ。誰もが思ったことだろう。クロロはそう言って自室へと戻っていった。どうやらクロロはバロンの能力を知っているようだ。
バロンがゆっくりと口を開く。

「お初にお目にかかります、私はバロンといいます。こちらに入団…とはいきませんがある方の命によりしばらくこちらでお世話になります。
何かありましたら全て私にお任せ下さい。皆様の身の回りこと全てサポート致します。掃除、洗濯、食事一通り家事は出来ます。勿論、お望みであれば皆様の仕事もお手伝い致します。
不束者ですが宜しくお願いします。」

私に対してした挨拶と同じように自己紹介をし、深々とお辞儀をした。

「団長とは一体どういう関係なんだよ?」

「いやフィンクス、そんなことよりどうやってマチの考えてることが分かったのか聞くのが先でしょ。」

「違うね、シャル。こいつに拷問器具の清掃まで仕事の管轄に入てるか聞くよ。」

「それ大事なことか?」

「何言てるね、ノブナガ。お前のその髷より大事よ。」

「んだとテメェ…。」

フェイタンとノブナガが険悪なムードになってきた。こいつらルールを忘れてないだろうか?ちょっと待ちな、と二人を止めようとする私より先にバロンが二人を制止した。

「お二方共、お待ち下さい。
皆さんの質問には全てお答えしますのでそんなに焦らなくても大丈夫ですよ。
これから一緒に過ごしていくのに得たいの知れない怪しい奴だと思われて警戒されるのは嫌ですから。」

そう言って優しく笑った。コイン無しであの二人の険悪なムードを取り払ったのはこいつが初めてかもしれない。

「まずはフィンクスさんからの質問ですね。私はクロロとは古くからの知り合いです。」

「そうなのか…。」

「次はシャルナークさんの質問ですね。私がマチさんの心が読めた理由はきっと愛のテレパ「ねーよ。」ふふ、マチさん。良いツッコミです益々惚れました。まぁテレパシーは冗談です。あれは私の念能力の一つですかね?」

「どういう念能力なの?」

「え、あ、はい。実は私は一度触れたことがある方に限りですが、心を読むことが出来ます。」

「それがバロンの念能力なの?」

「まぁ、そうですね。あともう一つありますがそれは今、禁じられていますのでお見せすることは出来ません。興味を持たれている所をすみません。」

悲しそうな顔をして謝罪をするバロンにシャルナークは珍しく焦って…いや、大丈夫だよ。きき気にしないでよ!とあたふたしながら言っていた。

「続いてフェイタンさんの質問ですが、」

悲しげな雰囲気を周りに漂わせ体育座りしながら突然言った。シャルナークはバロンの隣に座ってさっきと同じようなことを何か言っていた。

「私は頼まれれば何でもするという約束でここに居ますのでフェイタンさんが頼まれるなら拷問器具の清掃は勿論、私の仕事の管轄に入ります。」

シャルナークの説得?励まし?がようやく効いたのかバロンはフェイタンにそう説明し終えた後、立ち上がって微笑んだ。

「よし!まぁ聞きたいことがある奴はそれぞれバロンに訊くとして、とりあえず今からバロンの歓迎会でもしようぜ!!!」

ウボーが皆に提案した。そして皆は即座にそれを了承した。こいつらこれが目的だったな。

「じゃあ俺は酒を盗ってくる!」

ウボーはそう言って張り切って出ていった。フェイタンとフィンクスもウボーに続いて酒を盗りに出掛けて行った。

「じゃあ私達はお酒のつまみになるようなご飯でも作りましょうか。」

パクの提案で私とシズクとパクの三人は料理担当になった。

「なら俺は自室で読書に更けてる団長を呼んでくるよ。」

シャルナークはそう言って広間から去って行った。フランクリン、ボノレノフ、コルトピはそれぞれ何か用意をしていた。

その夜、歓迎会という名のばか騒ぎがあった。ウボーとノブナガはどちらが多く酒を飲めるか対決してるし、シャル、フィン、フェイの三人は酒をお互いにかけあって遊んでいた何やってんだこいつら。他のみんなも酒を飲みつまみを食べ…といった風にそれぞれで楽しんでいた。
みんなの楽しそうな様子を見てふっと頬が緩む。こういうばか騒ぎに呆れたりするけど嫌いじゃない。片手にあるビールを一気に飲み干して私もばか騒ぎしている輪の中へと入っていく。

ばか騒ぎをしている連中の所から少し離れた瓦礫の上に男二人は座っていた。
輪の中へと入っていくマチの姿を見てバロンは優しく頬を緩ませる。そんなバロンの様子を見て何かに気づいたクロロが言葉を発した。

「何だ?お前、マチに惚れたのか」

「えぇ。一生、彼女に尽くすつもりですよ。」

そう言ってクロロに妖しい笑みを向けるバロンにクロロはため息をつく。

「マチもとんでもない奴に好かれたものだな。」

楽しそうなマチの笑顔に哀れみの眼差しを向けご愁傷様だ、と呟く。

「酷い言われようですね。」

あはは、と笑うバロンにつられてクロロも笑う。左手の近くに置いてあったビール瓶を掴んでバロンの前に差し出す。

「改めて言おう。ようこそ、蜘蛛へ。俺はお前を歓迎する。」

「お世話になります、団長。」

そう言い、いたずらっぽく笑うバロンの頭を小突く。

「「 乾杯。 」」

グラスのようなカッコいい音はしないがクロロとバロンはそんなことは気にも留めず、久しぶりに会う親友と飲むことが出来る今の時間を純粋に楽しんでいた。

壁の隙間から射し込んだ月明かりがうっすらと二人を照らす。

この乾杯で彼とマチと旅団との、ある意味壮絶な物語が幕が開けたと言っても過言ではないだろう。

始めに言っておく。
彼、バロン=クロックワッカーは紳士的な見た目をし、またそのような振る舞いをしているが彼は紛れもない変態である。



 

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