下着
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最近、私の近くにいる男はすごく紳士的な見た目をしているけど凄いド変態。下手したら後に入団してくるヒソカをも上回っているかもしれない。

「あぁ、マチさん。
おはようございます。
今日もマチさんはお美しい…。貴女の美しさは美の女神と称されるヴィーナス様と同じくらいです。いえ、むしろヴィーナス様を超えていらっしゃいます。」

そう言ってにこやかに会釈をしてきたのはつい最近蜘蛛に入ってきたバロン・クロックワッカー、26歳。どうやら、クロロの知り合いらしい。
こいつは入ってきてからというもの仕事をするというわけではなく、ずっとアジトで掃除や洗濯、炊事などの雑用をこなしている。
一度、そんな雑用ばかりしてつまらなくはないかと訊いてみると彼はいつものように綺麗に笑って答えた。

「ご心配ありがとうございます。
ですが私は皆様のために働くことで喜びを得られる人間なのです。
ですから、雑用ばかりと呼ばれるものでも私にとっては大切な仕事なのですよ。
ふふ、それにもう日課になってしまったんです。」

変な奴だと思った。人のために何かをして喜びを得られるなんて私には出来ない。だから彼の言うことが理解出来なかった。

「今は洗濯が好きですかね。マチさんの下着も見れるなんてチャンス滅多にありませんから。」

…これも理解出来なかったというよりしたくなかった。軽やかな笑顔で何てこと言ってんだこいつ。今度から自分で洗濯しよう。

じっと彼の顔を見つめる。
彼の顔はそんなに悪くない。
クロロと並んでも見劣りはしないくらいの整った顔立ちをしている。
服の趣味だってそんなに悪くない。
黒のスーツに趣味の良いネクタイをして見事にきちっと着こなしている。
一度外に出れば必ず3人の女には告白されるくらいだからやはり彼はモテるのだろう。

「マチさん、シャンプー変えられましたか?」

「やめて、匂いを嗅ぐの。しかも何であんたが分かるんだい?」

「それは、私が毎日マチさんをあ「訊いた私が馬鹿だったよ黙って。」

「そんな所も素敵ですマチさん。」

要するに外見だけ無駄に整ってしまったド変態なんだな奴は。きっと、こいつの本性を知ってしまったら大概の女の子はどん引きするだろう。

未だに私に顔を近づけて匂いを嗅いでいるバロンの頭を小突く。そしたら愛のムチですか分かります嬉しいですよ、なんて訳が分からないことを言い放った。…お前はドMか。

「バロンさーん。ごめん!
俺、今、今度の仕事の資料を集めるので手一杯だからさ、クロロの相手してくれないかな?今、暇で暇で退屈してるらしいんだよ。」

「はい、かしこまりました。」

「ありがとー。じゃ、よろしくね!」

私と話している?途中でバロンは資料片手に部屋から出てきたシャルに頼み事をされた。バロンは嫌な顔一つせずそれを引き受ける。まぁ、クロロの相手だから嫌な顔はしないか…。一応、昔の知り合いだとか言ってたし。

「…クロロの相手か、これは大変面倒臭い仕事ですね。」

だから、この発言は聞かなかったことにしよう。
バロンがマニュアル通りの綺麗な笑みを浮かべて私へ言った。

「クロロと二人きりだと華がありませんので私が死にそうになります。ですから、マチさんもご一緒して頂けませんか?」

ちょっと思い始めてはいたけれど…あんたもしかしてクロロのことが嫌いなの!?
喉まで出かかった疑問を慎重に心の中で収まるように戻す。
うん、これで良し…心の中に疑問を収めることが出来たことを確認して頷く。
疑問が心の中に収まったのに頷いただけである。決して、こいつと一緒にクロロのもとへ行くことに頷いたわけではない。

「ありがとうございます!それでは早速、行きましょうか。」

なのに、こいつは私が了承したと思い込んだ。まぁ、私の動作も悪かったのだが…。
今の動作を訂正しようとする私の言葉を遮って強引に私の手を取りバロンは走り出した。力強く握られているのでその手を中々振りほどけない。

「クロロの暇潰しの相手はなるべく早く済ませましょう。」

クロロの部屋に向かう途中、真っ直ぐ前を見据えたまま私に言った。何故かと私が問うとバロンは信じられないことを言い出した。

「マチさんの下着類の洗濯の仕事にじっくりと取り組みたいからです。」

真顔で言ってんじゃないよ。あんたはアホか、いや変態だわ。
私はピタリと足を止め、思いっきり殺気を放ちながら目の前にいる不思議そうに首を傾げてこちらを見ている変態に言った。

「あんた、手がどうして二つあるか知ってる?」

たとえ一つが使えなくても、もう一つでムカつく変態を殴るためだよ。
見事に鳩尾にクリーンヒットした変態は痛みに悶えながらも幸せそうに微笑んでいた。
もう誰かこの変態をどうにかしてくれ。
殴ったら喜ぶってお前はドMか…。


ある午後の昼下がり、マチは一人の変態が自分の手に負えずに頭を悩ませていた。

ある午後の昼下がり、バロンは愛しい人からの愛の鞭に悦びを得ていた。愛しい人が自分に呆れているとも知らずに…。

二人はこれからどうなることやら…、今の状況からすると二人の関係がドラマや小説のような恋愛に展開していくことはまずないだろう。



   

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