空気の読めない阿呆な子
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穏やかな午後の日差しがアジト内の壁から差し込んでいる。珍しく仕事がない、それに異様に静かだ。それもそのはず普段はうるさい奴らも黙って何かしている。
あぁ…なんて平和なんだろうか。
こんな日は片手にプリン、片手に本で読書をするに限るな。
読みかけの本を閉じ、プリンのため冷蔵庫へ向かおうと立ち上がったその瞬間、まるで今までの静けさを破るように勢いよくドアが開かれた。

「さて!突然ですが、泣く子も黙ると恐れられる幻影旅団の皆様にクイズです。」

…おい、誰だ。この馬鹿を呼んだのは。
意気揚々と俺達に語りかけてきたのは最近、入団してきた権兵衛だ。
自由奔放で明るい向日葵のような女、
それが俺や皆の権兵衛に対するイメージだ。
あと初めて会った時から思っていたのだが、元気過ぎないか?いや、元気なのは良いことだとは思うがな…たぶん。頭はウボーと同じで少し弱い。だから、よくこんな突拍子もないことを言う。

"また始まったよ。"
明らかに皆そう思っている。付き合いが長いからとかではなく、誰が見てもそう思っているのが分かる。権兵衛一人を除いての話。

「ごめん、忙しいから後にしてくれないかな?忙しいから。」

爽やかな笑顔で断ろうとするシャル。なるほど、二回言うことで自分に用事があることが強調されるんだな。
だが権兵衛にはそんな嘘は通じない。と、いうかたぶん話を聞いていない。

「とりあえず、参加するしないかは聞かずに行っきまーす!」

「「「「「「「はぁーーっ。」」」」」」」

大きなため息をつく旅団員。それもそうだ、権兵衛が言い出したらそれに付き合わないといけない。ちなみに、団のルールにそんなことはない。ただ権兵衛が断らせないだけだ。それに付き合わされる団員は毎度毎度ご苦労なことだと思う。
とりあえず俺にはそんなこと関係ないので、関わりたくないのでプリンのために冷蔵庫へと足を運ぶ。

「勿論、今いる人達は全員参加だよ!」

何だと?それは、全員参加だから勿論クロロも参加だよ。そうに決まってるじゃん!と、言っているようなものだ…俺に。

「「「団長…。」」」

マチ、パク、シズクの三人が何とも言えない表情で俺を見上げる。すまん、許せ…

「団長、まさかプリン食べるから忙しいなんて言わないよね?クイズは皆で楽しむものなのに。」

「あぁ、勿論やるに決まってる!」

くそぉ…シャル、俺の考えを読みやがったな!そんな風に言われたらもうやると言うしか道がなかった。どや顔してくるシャルめっちゃムカつく。

「団長もやるからみんなやるよね?」

ニッコリそんな効果音がつきそうな笑顔で皆に言う権兵衛。もう悪魔の微笑みにしか見えない。団員の皆の表情が凍りついている。

「よし、返事がないってことは参加するってことだよね!」

「じゃー、クイズ行っきまーす!」

違うよ、権兵衛。返事がないってことは嫌だって思っているってことなんだよ。あと、皆の表情を見てくれ、皆の思っていることを察しようとしてくれ。そうすることで分かるから。

「今日は2月29日ですが何の日でしょーう?」

「「「「「「「うるう年。」」」」」」」

やっぱりそのクイズか。皆、そう思ったに違いない。さっきまでシャルとその話題について馬鹿騒ぎしていたからだ。

「えー、何で皆分かったの?私、シャルに言われるまで分からなかったのにー!」

権兵衛、お前はもう少し周りを見てくれないか?
そうすることで少しは分かるだろうから、いかに自分がアホなのか、いかに自分が自由人なのか、いかに自分が空気読めないのかが分かるから。

"空気の読めない阿呆な子"



 


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