知りたくなかった恋心
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"初恋は実らない"って誰かは悲しく寂しそうに言ったけど、私にそんなの分からない。何せ初恋もまだだから…。
現在、15歳。
たぶん花の高校1年生。
私の周りの皆は恋という名の青春を謳歌しているしまくっている!
恋をしている女の子達は皆キラキラ輝いている。あぁ、羨ましい。
一方、私はというとイチゴ牛乳片手に皆の恋話という名のノロケを聞いている…ように見せかけて今日の晩ご飯を予想していた。

「お〜い、名無しの」

誰かが私を呼ぶ。
あー、行ってもいいけど何故か嫌な予感がするのでとりあえず無視。
大丈夫、心の広い彼なら許してくれる…ハズ。
青春謳歌中の女の子達は自分達のノロケ話に夢中。

「おいって、無視すんなよ名無しの!」

いきなり後頭部に激痛がっ!!!!!
どうやらチョップをくらったようだ。
名無しののHPが20下がった。
あと、もう1発くらったら死は間違いない!笑えないくらいヤバい!

「あぁ、平和って大事だよね。」

頭をさすりながらチョップをくらわせた張本人キルア・ゾルティックを見上げる。ちなみに見上げる体制になったのは身長差の問題ではなく、ただ単に私が椅子に座っているからである。…何気に重要!

「…平和?なんだそりゃ?」

分からない。といった風に首を傾げる。その仕草が地味に可愛いのがムカつく。
誰か彼に常識という面目のナイフを持ってきて!毒入りの!!!!!

「あ、俺。毒じゃ死なないから。
飯にいっつも入って免疫?たぶんそれがついたから。
あと、お前みたいな奴が刺そうとしたって簡単によけれるよ。」

さらりと普通に言った…しかも、嫌味まで含めて。
ご飯にいっつも毒が入ってる家庭って何?今、15年間生きてきて初めて聞いたわ!
それより…

「お主、心が読めるのか?!!」

「いや、お前さっきの考え全部口に出してたから。」

「「・・・・・・・・・・。」」

オーマイゴット!!!!!
まさかのまさかのまさかだわ。
自分で思ってることを口に出すなんて…穴があったら入りたいくらいだわ!

「また口に出してるから。」

そう言ってお腹を抱えて爆笑するキルア。畜生、人の失敗がそんなに面白いのか。
拳を握り締めて殴り飛ばしたい気持ちを必死に抑える。ほら、何だかんだ言って中学からの友達だし、クラスメイトだし。殴り飛ばしたら私、酷い人になるじゃん?

「はー、久々にこんなに笑ったわ。」

「私は久々にこんなに恥をかいたけどな。」

どうやら一通り笑い終わったようだ。
今すぐ忘れてくれないかなー?すごい恥ずかしいんだけど、私にも羞恥心はある。片手に持っていたイチゴ牛乳の存在を思い出した。とりあえず、それを飲んで心を落ち着かせる。…よし、落ち着いた。

「ところで、キルア。用事は何?」

無いなんて言ったら地球の果てまでぶっ飛ばす。そう呪いを込めた笑みを向けながら訊いた。

「あぁ、そうだった!そうだった!お前に訊きたいことがあって来たんだよ。」

忘れてた、忘れてた。と軽く笑いながら私の隣の席に座る。当たり前のように座ってるけど、そこ自分の席じゃないだろ。苦笑いをする。
ふと辺りを見回すとただいま青春謳歌中の女の子達はどうやら盛り上がってどこかに行ったらしい。

「で、私に訊きたいことって?」

「あ・・・・、うん。それがさ、」

あれ?さっきまで威張り散らしていたのに急におとなしくなった。キルアの次の言葉を待つ。

「その・・・、あの・・・・。」

顔を真っ赤にしながら必死に言葉を紡ぎ出そうとする姿は、まるで昔流行っていた少女漫画の消極的な女の子の告白シーンみたいだった。例えが今イチ伝わらないのは私のアイデンティティーだから仕方ない。
さて、次はどんな言葉が出るのかな?
ゴン君と喧嘩したとか?それとも、アルカちゃんへのプレゼントどうしよう…とか?まさか…お母さんへの?!
キルアから出てくる次の言葉を予想しながら私はニヤニヤして待っていた。
けれど次の言葉を聞いた瞬間、
私の心臓は止まる。

「その、好き、な、子が…いるんだ。」

耳まで真っ赤にしながら俯くキルア。
…え、やめてよ。
あなたまで私を見捨ててに行くの?
皆、私を置いて行くの?
胸が痛い、というか心が痛い。張り裂けそうなくらい悲しいと鳴いている。苦しいと呻いている。

「その、子が、もうすぐ誕生日だから…さ、何かプレゼントを、したいんだ…けど、何が良いと思う?」

たしかに彼は中学からの友達でそれは今も変わらない。キルアのある程度のことは知っているつもり。キルアが照れ屋で天邪鬼で友達想いなことも一緒にいれば分かる。キルアの良さは私が1番知っている。
ずっと一緒にいたから。
ずっとキルアの傍にいたから。
あぁ、ようやく分かった。痛みの原因。私は恋をしていなかったんじゃない。
ずっと好きだったんだ…キルアが。
その想いに気づきたくなくて自分で勝手に蓋をした。

「・・・聞いてる、名無しの?」

なかなか返事を返さない私に不安を抱いたようで私の顔を覗きこむ。
やめてよ、やめて。
気づきたくなかったこの想い。
告白する前に失恋をした今日は最悪。
出来れば知りたくなかった。

知りたくなかった恋心。




   


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