にねん | ナノ



この世界にはたくさんの色がある。明るい色、暗い色、薄い色、濃い色、綺麗な色、濁った色。
それは知っていたけど、でも俺には見えなかった。
もちろん、本当の意味で認識できないわけじゃない。赤、青、黄色。ちゃんとイメージできる。
けれど、カラフルなはずの世界はいつだって、モノクロと変わらない無感動なそれだった。
あの日、彼と出会うまでは。

正確に言えば、彼に出会ったのはそれより前。
強豪バスケ部の一軍には不釣り合いに影が薄く、教育係のくせにバスケも俺より下手で。
知ってすぐに、彼は世界に馴染んだ。そう言えば聞こえがいいが、つまりは紛れ消えただけ。
クラスも違うし、卒業したらきっとすぐに忘れる。そう思っていた。
その認識が変えられたのは、二軍の試合にふたりで同伴したときだった。
何もないところからボールが飛んでくる。…俺の知らなかった彼の能力。
それを目の当たりにした瞬間、不思議なことに。
…世界が、色で溢れた。
はじめての感覚。初恋にも似たそれを、あの日俺は確かに感じた。
そうして今も、変わらずに。同じように、彼のくれた世界は輝いている。
きっと、彼がいなくても世界は回ってた。色がない、彼と出会う前の世界でも、特に支障はなかったから。
けれど、…知ることができた。世界は、美しい色で満ちているのだと。
そうして、胸の真ん中のこの想いも、抱くことができた。
だから今、伝えることができる。

「…ありがとう、黄瀬君。…僕も、君が好きです」
そうして、抱きしめてくれる腕と大好きな笑顔に俺は。
この世界にはまたひとつ、輝く色があるのだと知る。

たくさんの色をくれた人
(君がいるから世界は輝く)

20130713

主人公をトリに持ってこようかとも思ったんですが、やはり赤司様にとこちらを先にうp。べ、別に赤黄がかけなかったわけじゃいんだからね!
最近黒子っちーって絡む黄瀬君が足りない!



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