![]() 俺よりもショーゴ君のことをよく知る仲間達は、口を揃えて言う。 灰崎祥吾には近付くな。あいつは危険だ。 バスケ部以外の同級生も、みんな似たような言葉で彼を評する。 灰崎は怖い。不良。何考えてるのかわからない。気を付けた方がいい。 人懐っこい“俺”が間違えないように。そういう彼らの優しさなのは理解している。ありがたいとも思う。 …でも、みんなは知らない。 「…こんばんは、ショーゴ君」 「よぉ、リョータ」 確かに俺は途中入部だし、しかもショーゴ君は入れ違いみたいに退部してしまって。 だから、“バスケ部の灰崎祥吾”についてはそれほど詳しくない。 クラスも遠いから、“学校での灰崎祥吾”についても同じだ。 けれど、みんなが知らないショーゴ君のことは、誰よりも知っているということ。 学校の帰り、家の最寄り駅で降りて、家とは反対方向に少し歩くと出てくる公園。 最初は偶然だった。 たまたま通りかかった公園のバスケコートで、熱心にシュート練習をしている姿を見つけた。 最初はもちろん警戒していた。彼は退部したばかりだったから。声をかけるつもりもなかった。 でも、しばらく眺めていたら。…その美しいフォームから放たれるシュートに見惚れて、目を離せなくなって。 『いつもここで練習してるんスか?』 気付いたら、声をかけていた。 その日から、ここは俺とショーゴ君の秘密の場所。 部活のあと、1on1をしたり話したりする、特別な場所だ。 ここでは、自分を飾らなくていい。ショーゴ君が、そんなの必要ないって言ってくれるから。 俺は、自由になれるここに。…そしていつしか、彼自身に恋をした。 だからもう捨てられない。戻れない。 「赤司にイヤミ言われたよ」 ベンチに並んで座りながら、ショーゴ君は言う。 「…俺に近付くな、って?」 「ご名答」 「近付いてんのは俺なのに?」 「どっちでも一緒だろ」 悪者は俺だ。平然とそう呟いた彼は、きっと次にはこう言うだろう。 もうここには来るな。俺に関わるな。と。 それは俺のためだ。赤司っちがその気になれば、きっとすぐにこの場所は見つかる。 どちらにしろ、ここはふたりだけの場所ではなくなる。 それに、俺が傷つかないように。 ショーゴ君は自らを悪者にして、俺を守ろうとする。 それに気付かない鈍感ではないし、守られなきゃいけない子供でもない。 …それに、一番は。会えなくなるのに耐えられないから。 だって大切なのは、ショーゴ君がいてくれる場所なんだから。 言葉が続く前に、強引に唇を奪った。 ショーゴ君は渡さない。仲間にだろうと、絶対に。 「…ねぇ、ショーゴ君。俺、あんたが好きなんスよ」 「……知ってるよ。ずっと前から」 うん。知られてたことも、とっくに知ってる。 それで拒否しない彼が悪い、なんて最低なことを思いながら。 一旦離れた唇が、彼の側から重ねられるのを受け止めた。 「…もっと遅い時間に会うか?赤司に見つからない場所で」 「……それって、」 「俺の家、ここからすぐなんだけど」 だんだん日が落ちてきて、暗くて表情はよく読み取れないけれど。 こちらが恥ずかしくなるくらい真っ赤に染まっていることはよくわかった。 …やっぱり無理だ。手放すなんて。 だって、こんなにも。大好きな気持ちが止まらないのに。 夜に紛れて君に会いたい (その方が俺達にはお似合いでしょ?) 20130712 男前受けを目指したらショーゴくんが女々しくなったの図。 ![]() |