>>05
「ってて…」
一瞬、目の前に火花が散った。
とはいっても、咄嗟に受け身を取ったおかげか、怪我はしていないようだ。
さすが俺、普段弟と取っ組み合ってる成果がこんな所で出るとは。
「利央のヤロー…チャリ買い換えやがれアホ」
理不尽な怒りをこの場にいない後輩にぶつけていた俺は、そこでふと違和感に気付いた。
…俺の声、こんなんだっけ。
声変わりはとっくに済んでいるのに少し高めで、慎吾さんからはエロい声という嬉しくない評価をもらっている俺の声とは、何か…全然違う。
喉が痛いわけじゃないし、風邪を引いてるわけでもないし。
「うぅ…重い」
「……あ」
下から声がして、状況を思い出す。
そうだ、榛名とぶつかったんだ。
榛名を下敷きにしてしまったようだ。
「わり、榛名!大丈夫…え?」
慌てて降りて、榛名を覗き込んで…固まった。
榛名って…、こんなに小さかったっけ。
榛名って、こんなに声高かったっけ。
榛名って、うちの制服着てたっけ。
……榛名って、こんなに俺に似てたっけ?
「高瀬、怪我とか…って、俺…?」
似てるというには、あまりにも。
そこにあったのは、紛れもなく、俺の顔で俺の身体だった。