小説2 | ナノ


(文菜様へ/青黄)

黄瀬、あぶねぇっ!
聞き慣れた声と、頭への衝撃は同時だった。

たまたま今日は日直で、俺が来たときにはすでにコート内ではゲームの真っ最中だった。
隅で見ていた赤司っちに報告しようと、体育館の隅の方を通っていたら、来たのだ。
きっと、わざとではないバスケットボール。
声からして、たぶん投げたのは青峰っちだ。
珍しく焦った声だった。
確かに彼が変な方に飛ばすなんて珍しい…
暗くなっていく視界の中で、俺はそんなことを考えた。


「…本当にお前はダメなのだよ」
緑間っちの声で、意識が浮上する。
目を開けると、体育館が傾いて見えた。
椅子にでも寝かされているのか。
少し遠くで、部員たちが練習している。
(…そうだ、ボール、当たって…)
どうやら意識を失ってしまったらしく、その間に誰かがこうしてくれたのだろう。
と、そこまで回想しているところで、誰かの手が髪をすいてくれているのに気がついた。
…いや、誰か、なんて。
手だけで充分わかってしまうほど、俺はこの手を知っている。
そういえば頭の下が、椅子にしては温かく感じる。
これは、もしかして。
「うっせーよ緑間。悪いと思ってるからこうやって練習中断して膝枕してんだろうが!」
聞き慣れた声が、少し怒ったように耳元で鳴る。
…膝枕、と言われれば確かにそんな感触だ。
柔らかくはないけど、安心するそれ。
…きっと青峰っちだから、余計に。
「うわー逆ギレとか峰ちんさいてー」
「最低ですね青峰君」
「大輝は後で基礎練三倍だな」
先の言葉が気に入らなかったらしく、近くからこれまた聞き慣れた声での冷たい言葉。
…そういえば、あちらで練習しているメンバーの中に、色々な意味で目立つ彼らがいない。
やっとそれに思い当たった俺は、途端に申し訳なくなる。
貴重な練習時間なのに、と。
…だけど。…もう少しだけ、眠ったふりをしていよう。

この心地よさと、もう少しだけ一緒にいたいから。


膝の上の幸福
(手放しがたい、君の優しさと)

20121126

文菜様、お待たせいたしました!
+キセキの付け足し感がハンパない。
この二人は付き合ってても付き合ってなくてもどちらでも。



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