小説2 | ナノ


(匿名様へ/青黄♀)

「ねーねー青峰っち青峰っち」
「なんだよ、俺寝るんだけど」
「おっぱい」
「ぶふぉ!!」
飲んでいたジュースを盛大に吹き出した俺に、黄瀬は「ちょっと!汚いっスよ!」と抗議の声を上げている。けれど。
(誰のせいだよ誰の…!)
目の前の黄瀬のスレンダーな体には明らかに不釣り合いな、いやそうでなくてもおかしいだろう、シャツの二つの膨らみ。
屋上に上がる前に体育館に寄って行くから先に行っていて、とは何かと思ったら、こんなくだらないことのためにバスケットボールを取りに行っていたらしかった。
「ちょっと青峰っち感想は!?」
慌てて顔をそらすも、黄瀬はご不満だったようで、その視線の先まで移動してきた。
ぼよん、とその胸(?)が揺れ、存在を主張する。
これがさつきなんかだったら、『おっ、いい乳じゃねぇか。揉ませろよ』くらいの軽口は叩けるところだ。あいつはそういうタイプではないし、そもそもそんなもの詰めずとも立派なもんなのだが。
きっと、黄瀬だってそういう反応を期待しているはずなのだ。ちょっとしたお遊びのような。
…でも、彼女には返せない。というか直視すらできない。
ワイシャツのあいた胸元は、上から覗けばボールが見えるような。そんなあまりにもお粗末な状態ながら、…なんつーか。
(エロ…っ)
惚れた弱み、とでも呼ぶのにふさわしい、そんな照れが邪魔をするのだ。

「なんスかー、せっかく青峰っちの好きなおっぱいなのにー」
「うっせ…」
「それに、ショーゴ君は爆笑してくれたっスよ?」
(!?)
そのありえないセリフに一瞬時が止まる。
「…まさかとは思うが、そのとんでもない格好を灰崎の前でやったのか…?」
「だって青峰っちにつまんない芸とかして呆れられたら私ショックっスもん」
お前は芸人か。そんなツッコミをする余裕なんてなく。
「…青峰っち…?…きゃっ」
せめて、コンクリートの床に頭を打たないように。それくらいの理性しか働かず。
黄瀬を、その場に押し倒した。

バスケットボールは位置がずれ、続けて胸元から転がり出る。
それを適当に押しやって、黄瀬の見慣れた胸に頭を押し付けた。
大きくはないが、まったくないわけではなく柔らかい。
「あ、あおみね、っち?」
少し怯えたような声が耳に届く。
「…あんまり、他の男に無防備なとこ見せないこと」
「え、だってショーゴ君じゃん。しかも全然無防備とかじゃないっスよ?」
(そういうところ、だっての)
「それから、」

お前は、この残念な胸でちょーどいいの。
耳元でそっと囁いた。

(やっべ、このシチュエーション、すげぇ少女漫画感)
少々痒いが、黄瀬はプルプルと震え始めた。
これは、予想以上に効いて…

「残念ってなんスか!青峰っちのスケベ!ばーか!」
ドン、と顔面に押し付けられたそれ。
いつの間に取ったのか、先ほど転がったバスケットボールだ。
「な、なんでだよ…!」
「自分の胸に聞いてみることっスね!」

女心ってわからねぇ。
肩をいからせて足音荒く屋上のドアへと消えた彼女を見送り、そっと首を傾げた。


無防備な彼女
(そういうところが心配だって、そう言いたかっただけなのに!)

20141026

匿名様、お待たせとかいうレベルじゃありませんとも!ごめんなさいローリング土下座!
青黄♀でギャグとかむしろ私が読みたいレベルなのにどうしてこの結果なのか…
とりあえず青峰っちがスケベ野郎すぎてごめんなさい。



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