小説2 | ナノ


(リンネ様へ/キセ黄)

黄瀬涼太はかなり人懐っこい。
生来の性格と、おそらくモデルという仕事の影響もあるのだろう。
昔はスレていたこともあったようだが、バスケ部に入ったことで明るさを取り戻し、その後も紆余曲折あったものの、現在は。
「あれー、緑間っち?黒子っちに青峰っちも!どうしたんスか揃って!」
かつてのチームメイトの顔を見ただけで、ぱぁぁと輝き出す瞳。
ワックスで適当に整えられた頭に、犬耳が生えたような錯覚を覚える。
「たまたまオフが重なったので、みんなでバスケをしようかと思ったんです」
「お前も誘おうかと思ったのだが…練習中なら邪魔したな」
黒子と緑間の言葉に、黄瀬はぶんぶんと首を振る。
「いいっスいいっス、今日は監督や先輩達遠征で、一年は自由練習なんスよ」
ボールを持ったまま、体育館を飛び出そうとする黄瀬だが、今はミニゲームの真っ最中だったらしく、
「お、おい黄瀬…せめてゲームが終わってから…」
などと、チームメイトからは当然制止の声。
「あ?」
それに返されたのは、先ほどまでの人懐っこい声と笑顔ではなかった。
「アンタ…んーと名前なんだっけ、まいっか。何、俺にこの人達よりアンタら雑魚を優先しろっていうの?」
「え、いや、そうじゃないけど」
「じゃいいよね、雑魚は雑魚同士やってなよ。…お待たせ、行くっスよ」
おまけとばかりに声をかけたチームメイトに全力でボールを投げつけ、振り返りもせず体育館を出る黄瀬に、先に昼飯だから着替えるようにと青峰が声をかける。
それに振り返り答える黄瀬は、先ほどまでと変わらない人懐っこさ全開の笑顔だった。

「…予想以上だったのだよ」
「ん?何がっスか?」
マジバーガーでテーブルを囲みながら、黄瀬に問いかける。
「君の態度の豹変です」
「なんていうか…俺も人のこと言えねぇけど、そんなんじゃチームに馴染めなくないか?」
「レギュラーの先輩達はそこそこ強いし、もーちょい態度は改めてるっスよ」
そう言ってふふ、と微笑む黄瀬。
…以前は、程度の差はあれど、二軍三軍なんかにもそれなりの態度をしていた。
……変わったのはいつだったのだろう。それはわからない。というか、ここまで豹変することに俺達も驚いている。
でも、変えたのは俺達だ。キセキの世代、今はそう呼ばれている、かつての彼のチームメイト。
俺達が彼を惹きつけた。他など、見ないように。目が行かないように。
「もーみんな、いつまで食べてるんスか。早くバスケするっス!」
…そうして、今。この笑顔は、俺達だけのものだ。
新しいチームメイトだろうと何だろうと、俺達の特権を渡す気なんてない。

その視線は渡さない
(俺達だけを見ていて)

20130921

お待たせとかいうレベルじゃなくてもう申し訳ないの一言に尽きますリンネ様…!
今、WCを戦う黄瀬君はいくら一年モブとはいえどチームメイトを雑魚扱いしたりはしないと思うので、海常入学当初あたりだと思って頂ければ…あるぇ、でもそうすると緑間と黒子と青峰が一緒にいたりなんてことは…ごにょごにょ



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