一周年記念企画 | ナノ
 

TAKE04
 

決して眠ることなどできないと思っていたのに、気付いたら眠っていたらしい。
ふと目を覚まして、違和感を感じる。
月明かりで少しだけ明るい部屋。
見回せば見回すほど、俺の部屋なのに。
壁に貼られたポスターに、本棚に交互に並ぶ月バスとファッション誌。
天井に貼られた写真。
「……ん?」
天井の写真は、確か桃っちが撮ったやつで、だから彼女は写っていなくて。
中学の頃、共にプレイした仲間が、俺の他に5人。
頭の上に雑な字で書かれた『モデル(笑)』は、青峰っちの仕業。
だんだん意識がはっきりしてきて、確信を持つ。
…違和感の正体は、これだ。
だって、この写真は、剥がしたはずなのに。
「…なんで…」
枕元に置いてある携帯を開いてみる。
00:08と表示されたディスプレイにまた違和感を抱く。
その隣に書いてある日付、7月7日土曜日。
…紛れもなく七夕であり、彼の誕生日でもあるその日になったばかりだと、示していた。
確かにもう、7月7日は終わりに近づいていたはずなのに。
これは、夢なのだろうか。
…あるいは。
「…緑間っち」
少しの期待を抱いて。
押し慣れた彼の携帯番号を押す。
数回目のコール音が途切れ、聞き慣れた声が聞こえる。
「…ん、なんなのだよ。こんな夜中に…」
気怠げな文句が耳に届いた瞬間、視界がぼやける。
「…緑間っち」
「ん?黄瀬、なにを泣いて…」

「…ハッピーバースデー、緑間っち」
生きててくれてありがとう。

自分の唇からこぼれた言葉は、きっと。
今までのいつよりもしあわせに響いたに違いないと、思った。


しあわせすぎて
(世界一あたたかな涙があふれた)



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