一周年記念企画 | ナノ
 

TAKE03
 

緑間っちはトラックにはねられて、頭を強打して。
…即死だったと、そう聞かされた。
時間は夕方。…俺と電話してた、あの時間。
「…病院、来れば会えるけど」
「……遠慮するっス。…ごめん、ひとりにして」
青峰っちには申し訳ないけれど、会えない。
…会えるわけ、ない。
だって、もう、緑間っちは動かない。
話すことも、笑うことも。
目を合わせて、抱き締め合って、キスをして。
…当たり前だと思っていたことが、なんにもできない。

電話を切って、ベッドに寝転がる。
天井に貼ってある写真が目に入った。
キセキの世代、みんなで撮った写真。
確かこの時は、桃っちがシャッターを押したんだっけ。
黒子っち、青峰っち、紫原っちに赤司っち。
…そして俺と、緑間っち。
俺の頭の上に『モデル(笑)』って落書きしたのは、青峰っちだったっけ。
毎朝毎晩、ベッドに横になるたびに見てきた写真。
昨日の夜も、今日の朝もそこにあった。
あの中で変わらずに、緑間っちはぎこちなく笑っているのに。
…もうあの笑顔に、触れることは叶わない。

耐えきれなくなる。
起き上がって、手を伸ばして、その写真を天井から剥がす。
手はどうしても動かなくて、丸めることも破ることもできず、そっと抱き締める。
「緑間っち…」
どうして、緑間っちは死んでしまったの?
どうして、どうして、緑間っちなの?
だってだって、もっと、ずっと、一緒に、俺は。

窓辺に視線を移せば、今日は天気がいい。
織姫と彦星は、絶好の逢引日和だろう。
…なのに、今日誕生日の彼はもう、ここにはいない。

…多くは望まない。
叶わないことも、ちゃんと知ってる。
だから、どうか、願わせて。


時を巻き戻せたら
(他にはなんにもいらないから)



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