一周年記念企画 | ナノ
 

TAKE01
 

「今日のおは朝占いは最悪だったのだよ」
電話の向こうで、不機嫌そうに彼は言った。
「ラッキーアイテムも手に入らなかったのだよ。おかげで今日は最悪だ」
「あー、ラッキーアイテム。確かヴァイオリンだったっスよね」
「そんなもの一般家庭にはないのだよ。今から楽器店に行くところだ」
「…もう今日が終わるのにっスか?」
「今からでも遅くはないのだよ」
「…緑間っちって本当におは朝教っスよね」
「当然だろう。外れるわけがないのだから」
「だからどっからその自信…って違うっス。そんなことのために電話したわけじゃないっス」
「?なんなのだよ」
「いや、覚えてないんスか?」
「なにを」
「今日、緑間っち誕生日じゃないスか」
「……運が悪すぎて忘れてたのだよ」
苦笑する。
…緑間っちらしい。

7月7日。
空の上で、織姫と彦星の逢引が行われる日。
付き合い始めてはじめての、緑間っちの誕生日。
今年は土曜日で学校は休みだったけど、残念ながら部活は一日練習。
秀徳は休みだったみたいだから、会おうと思えば会えたけれど。
そうなると、緑間っちに来てもらうことになるから。
…誕生日なのに、それはちょっとと思って。

「おめでとうっス、緑間っち」
「…ん」
「プレゼント用意してあるんスよ」
「お前のセンスは俺には合わん」
そう言いながらも、緑間っちの声は嬉しそうで。
電話の向こうで、嬉しそうにはにかむ姿が目に浮かぶようで。
俺も、笑顔になる。

「黄瀬」
「はいっス」
「明日、部活休みだろう?」
「そっスよ」
「俺も明日は午前練習、なのだよ。だから…」
「わかった、会いに行くっス」
「…ん、そうだな。…それから、」

ガチャン!ツー…ツー…
衝撃音の後に、無機質な通話終了の音。
「?」
なに、言おうとしたんだろう。
…まぁ、いいか。
明日聞けばいい。
一日遅れの七夕の逢引で。

「早く会いたいっスねー…」
俺しかいない部室で、ひとり笑った。


『男の子がトラックにはねられたぞ!』
『誰か救急車…!』


まだなにもしらない
(ただ純粋に、笑う)



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